【フルートの基礎知識】ソルダードトーンホールと引き上げトーンホール
ソルダード? 引き上げカーリング? アンダーカット?
フルートを選ぶポイントの一つとして、このトーンホール周りの仕様もなかなか見逃せません。
トーンホールの仕様、つまり音孔周りのことですね。
トーンホールには引き上げカーリング方式と、ソルダード方式の二種類があります。
また、そのトーンホールの裏側の角を削るアンダーカットという加工もあります。
今回は二つのトーンホールと、アンダーカットの特徴について解説します。
ソルダードトーンホール
ソルダードトーンホールは、管体とは別に作ったトーンホールのパーツを管体にハンダ付けする製法です。
今のフルートの形がある程度確立された19世紀当初から使われている伝統的な製法で、当時は管体を変形させてトーンホールを造る技術がなかったためハンダ付けをしていました。
穴があいた管体に合わせて土手状になったトーンホールのパーツをハンダ付けしていると思われがちですが、実際には管体に管体よりも分厚いトーンホールのパーツをハンダ付けした後に穴をあけています。
なお、特に金のフルートの場合はハンダ付けではなくロウ付けすることがよくあります。
ハンダ付けはしていないのでソルダードという言葉には語弊が出てきますが、構造的にはソルダードトーンホールと同じであるため、一般的にはソルダードトーンホールとして区別されます。
ロウを使ったり、またハンダの種類によっても微妙に音色が変わると言われています。
ソルダードトーンホールの音質と吹奏感
一般的に、ソルダードトーンホール方式で造ったフルートはしっかりとした吹き心地と深味のある音に仕上がると言われています。
ソルダードトーンホールのメリット
ソルダードトーンホールの場合、引き上げ方式のトーンホールと違い管体の金属の歪みや金属疲労等を起こしません。
製造の際にトーンホールの厚みを自由に調整できるのも特徴。
一般的に、トーンホールは肉厚な方が抵抗感が増して音の重厚感が増えると言われています。
ソルダードトーンホールのデメリット
ソルダードトーンホールは引き上げカーリング方式のトーンホールに比べ、製造に手間と時間、そして職人の技術を要します。
そのため、いわゆるハンドメイドと言われるようなある程度グレードの高いフルートに使われることが多い傾向があります。
トーンホールのためにフルート自体の重量が増えてしまうのもデメリットの一つとして挙げられるでしょう。
また、長期間の仕様によるハンダの劣化により、息が漏れてしまう可能性もあります。
引き上げトーンホール
引き上げカーリング / ドローンアンドロールド / 引き抜きトーンホールなど、呼び名がちょっと多いのですが、本サイトではYAMAHAさんにならって引き上げ、もしくは引き上げカーリングと表記します。
引き上げトーンホールとは、管体に後からトーンホールのパーツを取り付けるのではなく、管体そのものの金属を引き延ばしてトーンホールを形成する製法です。
パッドが当たる部分は余った金属を切り落とした後、くるりと巻いて仕上げています。
このくるりと巻く作業がカーリングだとかロールドなどと呼ばれる所以。
20世紀にヘインズ社が確立した方法で、今では普及モデルのフルートはこの引き上げトーンホールが主流となっています。
引き上げトーンホールの音質と吹奏感
トーンホールが薄く軽い分でフルート全体が軽量になり、軽やかでレスポンスの良い素直な吹奏感と、明るい音色が特徴です。
引き上げトーンホールのメリット
後付けでパーツをつけない分フルート全体の重量が重くならず、吹奏感も軽いため奏者の負担が軽くなります。
また、製造にかかる手間・時間がソルダードトーンホールに比べ少なくて済むため、製造コストを削減することができ、フルートの価格を安く抑えることができます。
引き上げトーンホールのデメリット
引き上げトーンホールは、吹奏感と音質が軽やかになった分、重厚な音が出しにくいと言われています。
軽さの弊害ですね。
また、製法上管体を無理矢理引き延ばしてトーンホールを成形しているため、管体に負担がかかり硬度の変化や金属疲労など、金属としての強度が弱まっている可能性があります。
ただ、金属疲労については普通に使っていて問題になるほどのことはないので、神経質になるほどのことはありません。
どちらかというと音質面を重視した方が良いでしょう。
アンダーカットとは?
アンダーカットとは、トーンホールの裏側の角を削る加工です。
角度や削る量などは各社まちまちですが、総じて音質を整え、より豊かな鳴りを追求するために行われています。
フルートのトーンホールばかりではなく、リッププレートやクラリネットのトーンホールにもよく使われる加工手法です。
フルートトーンホールの仕様 まとめ
- 引き上げカーリングトーンホールは本体が軽く、明るくレスポンスの良いサウンド。
- ソルダードトーンホールは本体は少し重くなるが、重厚感のある音色と吹奏感が特徴。
- 製法の都合上、引き上げトーンホールは普及モデルに、ソルダードトーンホールはグレードの高いフルートに使われる傾向がある。
トーンホールの良し悪しは単純に演奏者の好みによるところです。
ソルダードトーンホールは高いグレードに多く引き上げカーリングトーンホールは普及モデルに多いように、グレードによって分かれている傾向があります。
予算によっては選択の余地がない場合もありますが、やはり知識としては知っておいた方が良いので、それぞれの特徴については頭に入れておきましょう。
特に楽器店店員のみなさんは必須知識ですから、ぜひ憶えておいてください。
フルートの他の仕様についても解説しています。まだご覧になっていない方は、ぜひご一緒にご覧になってください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません
日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)