【木製 / 金 / プラチナ】フルートに使われる素材(2/2)

2015年2月24日

そんなには見かけないけどフルートに使われる素材たち

前回、フルートに使われる素材 Part-1として銀 / 白銅 / 洋銀について解説しました。

まだご覧になっていない方は、ぜひこちらも併せてどうぞ。

 

フルートといえば銀色のイメージですが、それは銀、銀メッキを施した 白銅 / 洋銀がでできたフルートが一般的なためです。

しかし何もフルートは銀色のものばかりではありません。

今回紹介する木製フルート / は言わずもがな。

プラチナは銀色といえば銀色ですが、銀とはまた違った鈍く冷たい輝きを持っています。

どれもかなり高価でそう頻繁に見かけるものではありませんが、特に木製のフルートと金のフルートはプロの奏者がよく使用しています。

木製フルート(グラナディラ)

木製(グラナディラ)のフルート

木製(グラナディラ)のフルート

木製のフルートはほとんどの場合、グラナディラという木材が使われています。

グラナディラとは、ピッコロやクラリネット、オーボエなどにもよく使われている木材です。

非常に硬く、水に浮かばずに沈む程比重が大きい木で、黒っぽい外観が特徴。

木目がまだらにならず黒いっぽいもの程グレードの高い良い材とされます。

グラナディラを使った木製のフルートは、特にプロの奏者に人気があります。

グラナディラの音色と吹奏感

木製フルートはアメリカタイプとドイツタイプの二種類があり、それぞれ特徴が異なります。

グラナディラを使ってフルートを造る場合、管体の材の厚みが金属製のものに比べ厚めになるのですが、アメリカタイプは薄めに作ることによって金属フルートに近い楽な吹奏感と抜けの良さを実現しています。

反対に、ドイツタイプは管体の材の厚みがあり、本体に重みがあり吹奏感も重くなるため、吹きこなすには慣れが必要。

音色は木管楽器らしく少しこもり気味で重厚に仕上がります。

グラナディラの取り扱い

木製のフルートは金属製とは違い管体を磨く必要はありませんが、管体の割れという危険が潜んでいます。

他の木製管楽器であるクラリネットやオーボエなどと同様で、吹き終わったらスワブを通すなど水分には気をつけましょう。

極端な温度変化や乾燥も禁物

適度な乾燥は音の響きをよくしてくれますが、最悪の場合管体の割れに繋がってしまいます。

気をつけていても割れる時は割れてしまうのが木製の楽器ではありますが、その確率を少しでも下げるためにもスワブを通すなどのケアはしっかりと行いましょう。

金のフルート

金のフルート(K14金)

金のフルート(画像のものはK14金)

フルートの場合でも、金の純度は金のアクセサリー同様、K○○ / ○○金 といった具合で24分率の単位で表されています。

最高純度の純金でK24金。

金らしい煌びやかな金色が特徴で、華やかな印象になります。

金自体が素材として高価なものなので、金の割合が高い程より高価になっていきます。

グラナディラ同様、プロのフルート奏者に人気があります。

金製フルートの音色と吹奏感

金の純度や金以外の割金の材質に何を使うかによって特徴が大きく変わります。

銅を中心に混ぜていると音が柔らかく、銀を中心に混ぜているとよく締まった音に仕上がります。

銅の場合は赤っぽい色に、銀の場合は黄色っぽい金色に仕上がりになり、外観にも差が出ます。

当然ですが、K5金~K10金など金の純度が低いフルートの場合はこういった割金の影響を大きく受けます。

そして、純度が高いほどパワフルで遠達性が高く、倍音が豊かなシャープな金の特徴が顕著になり、フルート本体もだんだんと重くなり、抵抗感も強くなっていきます。

目安としてはK5金~K10金辺りまでは金のフルートの感覚を楽しみたい奏者向けで、K14金以上はプロ奏者で金のフルートの必要性のある方や、かなり本気なアマチュアの方向けといった風に思っておくと良いでしょう。

純金と呼ばれるK24金の場合、本来は混ぜ物はしませんが、フルートで使用する場合は柔らかすぎるため少量チタンを混ぜて造っています。

パワフルなサウンド・遠達性は素晴らしい物がありますが、フルート本体も吹奏感もかなり重く吹きこなすにはかなりの熟練が必要になるでしょう。

また、金のフルートの場合、材質の特性上銀のフルートのように音の変化をつけるのが難しいという特徴もあります。

金のフルートの手入れ・取扱い

金は錆びに強い金属で銀などに比べて日々の手入れは楽ちんですが、金属としては柔らかいので、傷やへこみなどには注意しましょう。

また、素材として金をつかっているわけではなく金メッキの場合、メッキはそれほど厚くはかけないため磨いている内に剥げてしまう場合があるため、注意が必要です。

金メッキの場合はなるべく柔らかいクロスで乾拭きする程度にすると良いでしょう。

プラチナ

SANKYOプラチナフルート

プラチナのフルート(キイはゴールド製)

プラチナは密度が高く重い金属で、日本では白金とも呼ばれています。

銀よりも暗く鈍い、冷たい感触のギラリとした輝きが特徴的です。

プラチナは貴金属のなかでも最も希少価値の高い金属で純金よりも高く、フルートに使われる素材の中でも最も高価。

価格は数百万と高級車が買えるレベルで、メーカーによっては価格表示が時価となっているほど。

初めてプラチナのフルートを作ったのは有名フルートブランドのパウエルと言われており、フランス生まれの作曲家エドガー・ヴァレーズがこのフルートのために比重21.5という曲を作ったなんて逸話があります。

(残念ながらこの曲の初演ではプラチナのフルートは使われなかったらしい)

楽器というよりは装飾としての意味合いが強いもので、実用性はそれ程ないとも言えます。

プラチナの音色・吹奏感

プラチナフルートはその高価さゆえに吹いたことがある方があまりおらず、情報が少ないのですが……

音はかなりパワフルで、本体も吹奏感もへヴィー。

長時間吹いているだけで身体が鍛えられるレベルで、体力に自信がなければまず手を出さない方が良いとのことです。

手を出そうにも気軽に出せるものでもありませんが。

プラチナの取り扱い

指輪なんかで取り扱ったことがある方もいらっしゃると思いますが、銀とは正反対で性質の変化に対して強い耐性を持っています。

汗にも温泉成分にもプールの塩素にも反応しない強靭な性質です。

『 プラチナは永遠の輝き 』なんて貴金属業界のキャッチコピーは伊達じゃないですね。

ただ、第一線で使うならともかく、楽器の価値を考えると傷でもつけようものならかなり勿体ない話。

さすがに個人的に持つ方はそうそういらっしゃらないとは思いますが、楽器店の店員であればいずれ目にすることもあるでしょう。

高価なものですから、くれぐれも慎重に取り扱いましょう。

まとめ

フルートだけではなく他の楽器にも言えるのですが、高いからと言ってグレードが高くて音が良いフルートというわけではありません。

楽器価格は金属に限らず木製などどんな材質でも素材の希少価値の高さと加工の難度によって決まります。

高価な素材であればそりゃあ職人さんも気合いを入れるとは思いますが、だからといって高い素材の楽器が絶対的に良いというものではありません。

最終的には使う本人の求めるサウンドや演奏性にどれだけマッチしているかが大事。

なお、フルートに使われる素材は前回の銀 / 白銅 / 洋銀も含め、グラナディラ / 金 / プラチナと色々なものがありますが、今回掲載した画像からもわかる通り管体とキイにそれぞれ別々の素材を使っていたり、金やプラチナをそのまま使うのではなく上からメッキとしてかけるなど、様々なパターンがあります。

こういった場合はそれぞれの特徴を掛け合わせたものとして考えて良いでしょう。