Weight Relief?チェンバード? 疑惑のGibsonレスポール
実はセミソリッドギターの代表的なモデルであるGibsonレスポール
前回、セミソリッドギター・チェンバード加工について解説した記事でも触れましたが、セミソリッドボディーを謳う楽器はそれ程多くはなく、今でもそれ程一般的には知られていない構造です。
(前回の記事はこちらから – セミソリッドギターとは – )
チェンバード加工という言葉が多少なりとも浸透し始めたのは、確かギターマガジン等雑誌に取りあげられ始めた2000年代の中ごろからだったように記憶しています。
だからといって特に注目を浴びるという程ではありませんでしたが……
しかしとある年、かの超有名エレキギターがボディーにチェンバード加工を施したセミソリッドボディーを標準仕様としてマイナーチェンジを行ったことで一時楽器業界は騒然としました。
そう、Gibson社のレスポールです。
2008年にGibson社がレスポールを、もはやマイナーチェンジとは言えないような全面的な仕様変更を行い、その際に変更された仕様の一つが、チェンバード加工によるホロウ化だったのです。
これによって、2008年よりレスポールスタンダードなどのレギュラーモデルはセミソリッドギターということになりました。
レスポールは元々バックに厚めのマホガニーを配し、その上にメイプルを貼るという材の組み合わせ。
どちらにしても貼り合わせは行われますし、本体が重く扱いづらいという声も多いレスポールですから、軽量化できるチェンバード加工を行うモデルとしては相性はよい思います。
が、チェンバード加工でレスポールの音が軽くなってしまったという声も多く、ネックなど他の場所の仕様も含め、マイナーチェンジ前の旧来の仕様を謳った『 レスポールトラディショナル 』というモデルもラインナップに追加されました。
言うなれば、トラディショナルモデルはマイナーチェンジ前の仕様のレスポールが復活しただけですね。
ある意味、この頃Gibson社はちょっと迷走気味だったとも言えるでしょう。
トラディショナルモデルもセミソリッド?
以上までで、2008年モデルのレスポールスタンダードはチェンバード加工されたものであるということはおわかり頂けたかと思います。
それ程メジャーではなかったセミソリッドギターにレスポールスタンダードが仲間入りすることによって、一躍チェンバード加工によるセミソリッド構造が人々の話題に上りました。
が、実のところ旧来の仕様を謳っているレスポールトラディショナルも Weight Relief(ウエイトリリーフ)という名のもと、肉抜きがなされていたのです。
ユーザーからは皮肉混じりにスイスチーズなどと呼ばれているこの9Hole Weight relief加工はGibsonも公表している情報で、楽器店のHPなどでも画像を掲載して紹介しています。
その後、レスポールスタンダードは2012年でのマイナーチェンジでまた新しいデザイン(?)の肉抜きがなされ、こちらはチェンバードとは呼ばれず、トラディショナル同様Weight Relief Mahoganyと謳われています。
Gibson的にはあくまでも2008年モデルのレスポールスタンダードがチェンバード加工であり、その他についてはWeight Relief Mahoganyということのようです。
音色のための加工か、重量を軽くするための加工かで分けているようですが……
正直、どれも構造上は立派なセミソリッド構造であり、ソリッドギターとは言えません。
しかし、管理人はどのモデルが良いとか悪いとか、そういうことを言うつもりはありません。
2008年モデルレスポールスタンダードは大胆なチェンバード加工だけではなく、ロック式のペグや非対称ネックグリップの採用など、色々と革新的なことに挑戦していてむしろ好感触でした。
しかし、Gibson社にはこれらに関連し、ある疑惑があるのです。
レスポールはずっとチェンバード加工されていた疑惑
上記の通り、近年のGibson レスポールスタンダードなどのモデルはチェンバード加工によりセミソリッド構造となっています。
しかし、大々的に謳い出だしたのがトラディショナルモデルからというだけで、実はそれよりもずっと以前、1980年代頃から肉抜きがされていたという噂があります。
レスポール全般(スタンダード・クラシックなど)でトラディショナルモデル同様のボディーバックのマホガニー丸い穴ぼこを掘って軽量化を図っていたようなのです。
その証拠に、80年以降のモデルを飛行機で運ぶためX線検査をされた際、穴ぼこが写っていたという報告がネット上でチラホラと。
(ユーザーによる報告があるだけで、公式アナウンスがあったわけではないため、正確なところは不明ではありますが……)
どうやら、80年代以降人気高騰により高まるレスポール需要に対し軽量で良質なマホガニーの確保が難しくなったことが原因のようです。
軽量材はレスポールカスタムなど高級モデルに回し、普及モデルは今スイスチーズと呼ばれている9hole Weight Relief加工を施したマホガニーを使用し始めた模様。
イージーK氏のバンド三昧 – ギブソン・レスポールに関する疑念 –
(上記キャプチャー画像の元記事へのリンクです)
旧来の仕様を謳うレスポールトラディショナルモデルもスイスチーズ状にくり抜いてあるというのは、ある意味旧来の仕様に忠実ということなのかも知れません。
しかしここで問題になるのは、Gibsonが特にこれを公表しておらず、長くソリッドギターとして(というか、セミソリッド構造であることを公表せずに)販売していたということですね。
実際、80年代以降Gibsonのレスポールを購入した人で、穴ぼこだなんて知りながら買った人はほとんどいないでしょう。
それを知っていた店員もどれだけいたことか……
もちろん公表されていない情報まで店員が把握していないといけないというのは無理がありますので、店員さんを責めるつもりはありません。
管理人も少し前までは店員さんの端くれだったわけですし。
しかしこれだけ高級な楽器を買って実は自分が思っていたのとは違う仕様だったというのはなんとも……
楽器は基本的には趣味の世界ですし、車のように命に関わるようなことはありませんが、安い楽器ならいざ知らずGibsonクラスともなると決して安い買い物とは言えません。
こういった情報についてはメーカーから販売店、ひいてはユーザーへ正確に伝達されて欲しいものです。
※今回の疑惑の話しについてはあくまで管理人が独自に調べたもので、特に確証があるものではなく、またGibson社を糾弾・告発するつもりはありません。
こういった話もある、といった程度のものですのであまり深刻に受け取られない様お願いします。
ディスカッション
コメント一覧
公式に発表されてる情報では本来モダンウェイトリリーフのロングテノンであるはずのうちの2016STD T。
先日ピックアップ交換しようかと外してザグリを覗いてみれば何故か完全にショートテノンで、びっくりして作業中断。
そして音がやたらとホロウっぽい(まぁそこは気に入ってるんですけどw)
下手すればこっそりチェンバードが復活されてたり、ロットによってはチェンバードの不良在庫が使われてたりするのかなーと思ってみたりして情報探っててこちらのページにたどり着きましたw
もとよりアメリカの楽器っていい加減な造りな庫と多いですけど、中でも特にGibsonはいい加減ですから、どんなことでもありえますよね。
普通ギターの買い取りの時なんか、本来の仕様と違ったら「 改造か偽物? 」となるんですけど、Gibsonの場合は「 Gibsonだからやらかしてそうだなぁ… 」と思えたりします。
「 そんなもんだよ 」で済まされないような価格ですけど、そういうダメなところもなんだか愛おしいって思えるところがGibsonのスゴイですよね。
Gibsonの魅力は造りの精度のよさやスペックうんぬんじゃないところにあるように感じます。
日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)