木材学 エレキギター・ベースによく使われるボディー材5種

2014年9月18日

エレキギター・ベースによく使用される木材について

木材学 フレームメイプルトップボディー

いろいろな木材が使われるボディー材。

ボディー材はルックスにも音響にも密接に関わる、ギター・ベースの重要要素の一つです。

今回は、その中でも特によく使われる5種類の木材について解説します。

1.バスウッド BASSWOOD

バスウッド材

バスウッドは全体的にはアルダーと特性の似た白木ですが、赤みが少なく木目も薄い地味なルックスの木材です。

柔らかいので加工性に優れ、他のアルダー、マホガニー、アッシュなど高級木材に比べ価格も安いため製造コストが安く上がる特徴があります。

その音響特性も相まって初心者用・入門者用のギター・ベースによく使われる木材です。

バスウッドの使用例

柔らかくて加工性がよく、安価で軽い。

まさに初心者用のエレキギター・ベースにはうってつけのボディー材といえるでしょう。

そういった事情で廉価なストラトキャスターモデルのアルダーやレスポールモデルのマホガニーの代替材として使われることもあります。

が、だからといって音が悪いわけではありません。

例えばミュージックマンのエレキギターバック材に使われるなどそれなりに高額なモデルでも使用されています。

木材の場合、特に音響特性の良さではなくその材がどれだけ入手しやすいかで価格が決まる傾向があるためバスウッドが安いだけで、安い=悪いワケではないことは憶えておきましょう。

最近は入門者向けのギター、ベースでも更なるコストダウンを図ってか、バスウッドですらない謎の木材が使われ、仕様にはハードウッドなどと書かれていたりします。

多分、これと決まった木材ではないため種類を書けないのでしょう。

(使用例としてバスウッドを使ったギターの画像を載せたいところでしたが、木目があまりにも地味なため塗りつぶされることがほとんどで写真が見つかりませんでした)

バスウッドのサウンド・音響特性

BASSWOODなんて名前ながら別にベース用の木材だとか、低音が出やすいわけではありません。

音響特性はフラットで素直

外観も含め、他の木材に比べこれといった特徴がないのが特徴。ガンダムで言うジムみたいな。

2.アルダー ALDER

ギター・ベースのボディー材によく使われるアルダー

ギター・ベースのボディー材によく使われるアルダー。

アルダーはバスウッドに比べ少し赤みがかった色で、木目の出方もしっかりしている点が特徴的。

アッシュやメイプルなど他の木材に比べ比較的まだ軽量で柔らかい部類ですが、バスウッドと比較すれば重みがあり、若干堅めの木材です。

アルダーの使用例

主にFENDER系のギター・ベースのボディー材としてよく使われるアルダー

アルダーは、主にストラトキャスターやテレキャスター、ジャズベース、プレシジョンベースなどフェンダー系のエレキギター・ベースのボディー材として使用されてきた伝統的な木材です。

バスウッドほどではないにせよ割と柔らかめの材質で加工性も悪くありません。

後述する音響特性のバランスの良さに相まって、フェンダーに限らず色々なメーカーのギターやベースで広く使われています。

アルダーのサウンド・音響特性

アルダーは中音域の特性が強く、『 中音域に粘りのあるサウンド 』などと評されます。中音域は往年のギターロックで最も重要視される音域のため、特に重宝されています。

とは言っても極端に中音域ばかり強調されるわけではなく、音質は硬すぎず柔らかすぎず、極端なくせのないバランスの取れた音響特性を持っています。

音の立ち上がりも悪くなく、音作りもしやすいボディー材として優秀な木材です。

3.マホガニー MAHOGANY

ギターのボディー材としてよく使われる木材マホガニー

ギター・ベースの指板やアコギのサイドバックによく使われるマホガニー。

マホガニーはギターやベースで使われる材の中では比較的軽量で、柔らかく加工性も優れた木材です。

外観的には赤みがかった茶色・褐色で、導管が太いのが特徴。塗装の段階でウッドフィラーで導管を埋めるのが一般的です。楽器のみならず、木製の高級家具などでもよく使われる高級木材。

稀にメイプルのような杢が入ることもありますが、ギターのボディー一面に使える程均等に広く出ることはあまりなく、フレームメイプルの様な人気はありません。

マホガニーの使用例

レスポールのボディーバック材としてよく使われるマホガニー

エレキギターでは特にレスポールやSGなどギブソン系のエレキギターのボディー材としてガンガン使われています。

またエレキギターのボディーだけでなく、ネックやアコースティックギターのボディーのサイド・バック材としても長年使用されてきた歴史の深い高級木材です。

マホガニーのサウンド・音響特性

マホガニーはエレキギター・ベースのボディーに使用した場合、丸く柔らかい、暖かみのある音に仕上がる音響特性を持っています。

しかし低音域と高音域、いわゆるハイとローが出にくい上に音が柔らかくアタック感もないため、音が埋もれがちな一面もあります。

SGはあえてこのメリハリのない特徴を利用し、反対に中音域を全面に押し出しています。

一方、レスポールの場合はマホガニーの上にメイプルを貼り合わせて音の立ち上がりやアタック感、メリハリを出しています。

4.アッシュ ASH

アッシュ材

アッシュはかなり硬く重量のある木材で、木目が大きく出たクセの強いルックスが特徴的な白木です。

大きな節が出やすい木でもあり、外観上良質な材を確保するのが年々難しくなっています。楽器ではエレキギターやベースのボディー材以外ではあまり使われていません。

導管がかなりしっかりとしているため、マホガニーと同じく塗装の段階でウッドフィラーで導管を埋めて目止めを行う必要があります。

また油分が少ないのでマシといえばマシですが、非常に硬いため細かい欠けなどが起こりやすく加工性としてはあまりいいとはいえません。

その分製造工程で手間のかかる木材です。

しかし木材自体が白いためウッドフィラーに色をつけて個性を出したモデルも多々あり、エキゾチックな木目も活かした見た目の個性が強い楽器が多いです。

ギターやベースで使う場合、白味の強いホワイトアッシュと、若干黄身がかったスワンプアッシュの二種類に分別されます。

基本的な特性は同じですが、ライトアッシュ、ライトウウェイトアッシュとも呼ばれるスワンプアッシュはホワイトアッシュに比べ若干比重が軽く、柔らかい特徴ががあります。

そのお陰でサウンドのクセも弱まり、また若干軽量になります。

アッシュならではのサウンドとそのエキゾチックな外観から愛好家も多いのは確かですが、やはりアルダーに比べ音の傾向も偏りがちで重量もあるため、プレイアビリティは優れているとは言えません。

なお、アッシュの中でもスワンプアッシュや比較的軽量なライトアッシュ、ホワイトアッシュなどいくつか種類や呼び名がありますが、今回はアッシュ全般で解説をしております。

(もうお気づきの方もいらっしゃるでしょう。アッシュの説明がやたら長いのは、管理人がアッシュ好きだからです)

アッシュの使用例

特に70年代のFenderエレキギター・ベースでボディー材として使われたアッシュ

アッシュは特にフェンダーの初期や70年代のエレキギター・ベースで特によく使用されました。

70年代以降もフェンダー社がストラトキャスターやジャズベースなど人気モデルのボディー材にアルダーを使ってみたりアッシュを使ってみたり、両方の材を使ったモデルを併売したり。

そういった経緯もあってアルダーとよく比較され、ライバルとして扱われることも多い木材です。

(クセの少ないアルダー派の方が優勢)

現在でもアルダーモデルと並んでアッシュを使ったストラトキャスターやテレキャスター、ジャズベースなどが製造されています。

他にもESPなど新進気鋭のギターメーカーでもそのエキゾチックな外観を活かす形で多用され、人気を博しています。

アッシュのサウンド・音響特性

ボディー材にアッシュを使った場合、硬くパキッとしたエッジの立ったハイ寄りのトレブリーなサウンドに仕上がります。

また、立ち上がりが早くアタック感も強いメリハリの効いた音も特徴的。

高音域にクセがあるため、ピックアップの種類やセッティングによっては耳につくキンキンとしたサウンドになる場合もあります。

アルダーやマホガニーに比べ音作りが難しいボディー材といえるでしょう。

5.メイプル MAPLE

ギター・ベースの指板やボディーによく使われるメイプル

少し杢が出たメイプル。ギター・ベースの指板やボディー材によく使われる。

メイプルシロップのメイプルです。日本で言うところの楓(カエデ)の木。

ボディー材としてよりもエレキギター・ベースのネックや指板としてよく使用される材です。

更にソフトメイプル、ハードメイプルと細かく分類することができますが、総じて硬く重いと言うのが特徴。外観的には白い木で木目もそれなりにしっかりとしています。

硬い木らしく音の立ち上がりが早く、アタック感のありしっかりと芯の通った音響特性を持っています。

この辺りはメイプル材を指板に使った時と同様です。

メイプルの使用例

ボディー材にメイプルを使う際、レスポールなどのトップ材として使用される

エレキギター・ペースのボディーへでメイプルを使う場合、レスポールスタンダードのボディーのトップ材としてマホガニーの上に貼り合わせる使い方が挙げられます。

このように他のボディー材と組み合わせて使うことが一般的で、メイプルのみでボディーを構成することはあまりない木材です。

重すぎる・音が硬すぎる・硬くて加工が大変の三重苦で実用レベルではないのです。リッケンバッカーもメイプルをボディー材としてよく使っていますが、中をくり抜いたセミホロウギター仕様にしています。

管理人、一度実験的に製作されたオールメイプルボディーのストラトを持ってみたことがあります。

感想はただ一言、滅茶苦茶重い。座って弾けばボディーが膝に、立てばストラップが肩に食い込む代物。大げさではなく、普通のストラトの倍は重かったのではないかと思うほど。

リッケンバッカーのようにくり抜くか、せめてチェンバード加工でもしないととても使えたものではないでしょう。ちなみにハードメイプルはボウリング場の床材としても使用されています。豆知識。

メイプルの使用例とフレームメイプルなどの杢

フレームメイプルとキルトメイプル

左がフレームメイプル・右がキルテッドメイプル

マホガニーの項目でも紹介した通り、メイプルはレスポールのトップ材として使われることが多い木材です。

他にもPRSやIBANEZなどモダンスタイルのエレキギター、ベースブランドのモデルによく使われています。

実はメイプルがトップによく使われるのは音響のためだけでなく、派手で美しい杢が出ることがあるため装飾目的で使っている側面もあります。

フレームメイプルとも言われるいわゆる虎杢や、キルテッドメイプル(キルトメイプル)など、派手な杢が出たものや、スポルテットなど特殊なメイプル材は人気が高いです。

バーズアイネック

バーズアイメイプルを使用したネック。

他にもバーズアイメイプルと呼ばれる鳥の目の様な模様が点々と出た鳥眼杢もあります。

しかし模様の出方が不均等なことが多く細かいため主にネックに使用されボディー材にはあまり使われません。

なお、実はフレームメイプルもフレームメイプルもバーズアイも木材としては病気、奇形の類で珍しいもの。木材自体が高価なため基本的には高価なモデルに使われます。

1万円台の安価なモデルでもキルトメイプルやフレームメイプルなど杢の出たメイプルが使われたギターやベースを見かけることがあるでしょう。

こういったものは実際に杢の出たメイプルを使わず薄いフィルムを貼って杢を再現したフェイクか薄くスライスしたメイプルを貼っていることがほとんどです。

ちなみに杢が出るのはソフトメイプルがほとんどで、ハードメイプルで杢が出るのは非常にレアです。

メイプルのサウンド・音響特性

メイプルはアッシュ同様非常に硬い木材のため音の立ち上がりが早くアタック感の強いトレブリーなサウンドです。

レスポールに使われているのもマホガニーのみでは音が落ち着きすぎてしまうため、メイプルをトップに使うことによって音にメリハリを持たせることが目的でしょう。

実際、マホガニーオンリーのSGやレスポールジュニアなどに比べ、レスポールの方がメリハリが効いたサウンド。

エレキギター・ベースのボディーによく使われるメジャーな木材まとめ

エレキギターやベースのサウンドの9割はピックアップマイクとアンプで決まると言っても過言ではありません。

よほどそのセッティング環境に慣れていなければ音だけで判別することは難しいでしょう。しかし、そのギターで音作りと演奏を行うプレイヤーは、ボディー材の特性の違いを必ず感じるはずです。

木材はルックスはもちろん、そういったサウンドや、重さによる演奏性への影響も少なからずある部位です。なお、木材は天然の素材なので必ず個体差がありますし、木材よっては上記の特徴に当てはまらないものも多々あります。

「 あくまでもそういう傾向がある 」と念頭においてご覧ください。

なお、今回はエレキギター・ベースのボディーによく使われるメジャーな木材をピックアップしていますが、マイナーな木材も別途記事にしています。

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