木材学 指板に使われる木材 3種+α
指板の材について
今回は木材学ということで、ギター・ベースに限らず、弦楽器には欠かせない指板について解説します。
指板とは、弦を押さえた時に弦や指が当たるネック上の木材のことですね。
エレキギターやアコースティックギター、普通のベースやウクレレなどフレットがある場合でも、直接触れることはなさそうでも意外と結構触っていたりします。
頻繁に触れ弦を押さえつける場所で、なおかつ指板材の硬度がネックの反りくさにも影響するので、強度の高い木材が使用されます。
具体的に指板によく使われる木材は、ローズウッド・メイプル・エボニーの三種。
今回はこのローズウッド、メイプル、エボニーと、+αの素材を使った指板のそれぞれの特徴について解説しましょう。
ローズウッド指板の特徴
ザ・木、っていう感じの茶色っぽい色をした木材で、ギター・ベースでは最もポピュラーな指板材です。
ローズウッドなんて名前ですが、別段バラの木というわけではなく、伐採した時に出た樹液の香りがバラの匂いに似ているということで命名されました。
和名では紫檀。
比重があり硬度が高い割には柔軟性があり、曲げて成形するアコースティックギターのサイド・バック材に使用されることも多い材です。
一般的にはインド産であるインディアンローズウッドが供給が安定しており、最も多く使われています。
が、高級モデルにはマダカスカルローズウッドやホンジュラスローズウッドなどが使用されることもあります。
以前はブラジル原産のブラジリアンローズウッド(ハカランダ)もよく使われていましたが、1993年ワシントン条約により保護されブラジル国外への輸出が禁止されたため、近年新しい楽器では使われていません。
禁止されるまでにハカランダが使われたギターやベースが世界的に価格が高騰しています。
ローズウッド指板の場合、リッケンバッカーなど一部メーカーを除いて基本的に指板面は塗装を施さないので木材自体が常に外気に触れており、メイプル指板に比べ指板の割れや縮みが起きやすいです。
割れに関しては使用上さほど影響はありませんが、縮みの方は指板が縮んでしまった分フレットが指板サイドから飛び出す形になり、手に触れて痛い、ということに繋がります。
割れや縮みを防ぐためには、レモンオイルなどを指板用のオイルを塗布し、保護することが効果的です。
ローズウッドの音響特性
木材を音響的に考えると、基本的に硬い程、音も硬くアタック感があり、反応が早く立ち上がりが良くなります。
先にも述べた通り指板で使われる木材はみな硬い材ではありますが、ローズウッドは指板に使われる木材の中では比較的柔らかく暖かい響きを持った材です。
ウォームなサウンドに仕上げたい時やボディー材、他のパーツとの兼ね合いでサウンドのバランスを取りたい時などに選ぶと良いでしょう。
メイプル指板の特徴
ローズウッドやエボニーと違い色が白く、手汗など汚れが付くと目立つため、指板面もネックと一緒に塗装されるのが一般的。
特にラッカー塗装の場合は、ネックとともに徐々に飴色に濃くなっていく経年変化も楽しむことができます。
弾き込んでいるとどうしても汚れがつき黒ずんでくることがありますが、それも味、ということで却って好まれることもあります。
メイプルを本格的に指板材に取り入れたのはFender社が最初でしょう。
指板材というか、コスト削減のため指板を特に分けずネックも指板面も1ピースのメイプル材を削って成形し、そのままフレットを打ち込んだだけだったのですが。
その後長い歴史の中でFender社自身も貼りメイプルを使ったこともあり、メイプル1ピースネックばかりではなく、ローズウッド指板の様に後からネックグリップ材に指板材を貼るタイプのメイプル指板ネックもあります。
なお、アコースティックギターではローズウッドが主流で、Fenderのアコギなど一部のモデルを除き、メイプル指板が使われることはほとんどありません。
メイプルの音響特性
ローズウッドに比べ音の立ち上がりがよく、アタック音のハッキリした硬めの音質です。
ザクザク刻むようなカッティングプレイを多用するようなプレイスタイルに適しています。
また、三種の指板材の内もっとも豊かな倍音が期待できる材で、きらびやかなサウンドを作るのにも合う材といえます。
その点がストラトキャスターやテレキャスターのイメージ、というかピックアップなどの仕様にピッタリだと個人的には思いますが、逆にバランスを取る意味でもあえてローズウッドにする、という選択肢も有りでしょう。
エボニー指板の特徴
先に挙げたブラジリアンローズウッドのような特殊な例は除いて、指板に使われる木材の中でも最も高級な木材がエボニーです。
和名では黒檀といい、楽器用材以外では仏壇などで使われています。
とにかく硬い木で、指板によく使用される三つの木材の中でも最も硬度・強度が高く、目が細かく黒いのが特徴。
バイオリンやチェロなどの高級弦楽器は基本的に指板がエボニーです。
高級な木材なので、エレキギターやベース、アコースティックギターでは一部高級モデルでしかあまり採用されません。
なお、フレットレスベースはフレットがなく弦を直接指板に押し付けるため、弦の跡や傷がつきやすいということで、他の指板材よりも硬いエボニー指板を使うことが多いです。
(それでも跡がつく時はつくのですが)
バイオリンやチェロのような高級弦楽器でエボニーが指板に使われるのも同じ理由ですね。
こういった弦楽器に使われるエボニーは厚みや大きさ、質が断然いいものを使うため、価格は段違いですが。
実はエボニーもワシントン条約により規制がかかっている木材のため、一般的な価格で売られているようなギターやベースのエボニー指板ではそれ程良質なエボニーは使われていません。
外観的に真っ黒であればある程質が良いとされていますが、そこまで良質な材はコスト増の原因となってしまうため、多少木目のムラのあるエボニーや、エボニーに似た亜種の材に着色して仕様していることもあります。
素人にわかるようなレベルの話ではないので、それほど気にすることでもないかとは思いますが……
なお、ローズウッド同様指板面には塗装を施さないので、やはり乾燥した環境では縮みや割れなどが起こることがあります。
乾燥しているように感じたら、レモンオイルなど指板用のオイルで保護した方が良いでしょう。
エボニーの音響特性
メイプルよりも反応が良いとさえ言われるほど立ち上がりが早く、それでいて高域だけではなく低域もバランスよく出ます。
そのため非常にメリハリの効いたサウンドを期待できます。
指板に使われるその他の素材 ベイクドメイプル・樹脂(エボノールなど)
指板に使われる素材としては上記で挙げたローズウッド、メイプル、エボニーの三つの木材が最もメジャーですが、それ以外でも使われている素材がいくつかあります。
実は樹脂製の指板も存在しているのです。
代表例ではGreco社が昔使っていたエボノール樹脂。エボニー風に加工されたプラスチックです。
また、樹脂など新素材ではないのですが、ギブソン社が独自に開発し、最近のモデルに搭載されている『 ベイクドメイプル 』なんかも有名ですね。
要は焼き色をつけて黒っぽくしたメイプルなのですが、伝統的にローズウッドやエボニーを指板材に使ってきていたGibson社が、その代替としてライバルであるFender社のイメージの強いメイプルを使ったということで話題になりました。
ただ色が違うメイプルというだけではなく、高温で焼くことにより水分を飛ばし、おり密度を高めており、通常のメイプルとは若干特性が異なるようです。
見た目はローズウッドやエボニーのような黒っぽい色で、レスポールやSGなどギブソン系のギターでもさほど違和感はないですね。
実際、素人目にはこれがメイプルであるとはわからないでしょう。
こういった特殊な指板材はまだまだ一部のみの採用ですが、木材資源の減少が顕著になってきている現状、楽器の素材がプラスチックなど新素材に代替される日は意外と近いかもしれません。
指板によく使われる木材 3種 まとめ
どちらかというと見た目で語られることの多い指板ですが、やはり多少なりともサウンドやネックの剛性にも影響を及ぼす大切な要素です。
ストラトやテレキャスターなどFender系のギターでは同じモデルでメイプル指板かローズウッド指板かを選べるものも多く、ピックアップやその他パーツのように気軽に取りかえられるものでもありません。
見た目の特徴やメンテナンス性も含めしっかりと特徴を憶えておきましょう。
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