ギター・ベースのネックジョイント・セットネックとボルトオン(デタッチャブル)の構造と特徴

2016年5月3日

ギター・ベースの分類方の一つ、ネックジョイント

ギターやベースはざっくり分けると、ネックとボディーの二つのパーツで構成されています。

ギター・ベースはこの二つの接合・接続=ジョイントの方法によっても様々な特徴が生まれます。

ジョイント方法にはスルーネックを含め主に3種類ありますが、今回はその中でも一般的なセットネックとボルトオンネック(デタッチャブル)ジョイントについて解説します。

セットネックタイプ

レスポールのヒール

アコギやウクレレのみならず、バイオリンなど伝統的な弦楽器にも使用されるセットネック構造

・ギターの登場以前より弦楽器で広く使われてきた伝統的な手法

・ボディー側にネックポケットと呼ばれる溝を掘り、その溝にあわせてネックを造り接着する

・基本的に一度接着した後はネックをはずすことができないため、メンテナンス性・生産性でデタッチャブルタイプに劣る

・ネジ留めのボルトオンタイプに比べボディーとネックの密着度が高くなるため、振動の伝達の面ではデタッチャブルタイプよりも優れているとされる

・ボルトオンに比べヒール部分の加工の自由度が高く、ハイポジションでの演奏性をより高めることも可能

ネックとボディーを完全に接着してしまうセットネック構造自体はギターが誕生する以前から多くの弦楽器で使われてきた伝統的な工法です。

そのためアコギはほぼ100%セットネックといっても過言ではありません。

エレキギターでのセットネックの代表例はなんといってもGibsonのレスポールでしょうか。

一部廉価版のモデルを除きレスポールも基本的にすべてセットネックと思ってよいでしょう。

というか、Gibsonのギターはほぼ全てセットネック構造で造られています。

組み込みの際の精度にもよるため個体差はありますが、セットネックジョイントは構造上ネックとボディーの密着度がデタッチャブルに比べ高くなるため、本体の鳴りの面では有利とされます。

またスルーネックのギター・ベースほどではありませんがヒール(ネックとボディーの継ぎ目付近)の加工の自由度が比較的高く、高音域・ハイポジションでの演奏性を向上させることも可能です。

大胆なヒールカットがなされたセットネックギター_ARIAPRO2_PE-DC_STD

ヒールカット加工によりハイポジションでの演奏性を確保したセットネックギターのヒール部分(AriaPro2 PE-DC STD)

ただし、セットネックギターは接着が必要な点、また比較的早い段階でボディーとネックを組み込んだ状態で製作が必要である点など、ボルトオンギターに比べ何かと手間がかかります。

そのため同クラスのデタッチャブルタイプのギターに比べ価格が高価になりがちなのが難点といえるでしょう。

ボルトオンネック(デタッチャブルタイプ)

ボルトオンネック(デタッチャブルタイプ)のジョイント

Fender創業者レオ・フェンダー氏により実用化され、今やエレキギター・ベースのネックジョイントでも最も一般的なボルトオンジョイント

ボルトオンネックによるジョイントの特徴をざっくり挙げると、

・ネックを接着はせず、ボディーのネックポケットにネックをはめ込んだあとネジで留める

・エレキギターやベースの中でもソリッドボディーを持つギターに使われる手法

・ネックとボディーを別々に生産することができるため、生産性が高く、価格を抑えやすい点がメリット

・取りはずしも容易でメンテナンス性が高く、ボディーあるいはネックだけを取り換えることも可能

・構造上ジョイント部分にボディーとネックとの接合部に段差ができるためハイフレットでの演奏性の面では多少不利

といったところ。

要はボディーとネックをネジで固定する手法です。

ボルトオンネックのギター・ベースはデタッチャブルタイプともいいます。

元々はFenderの創業者であるレオ・フェンダー氏が考案・実用化した構造で、代表例としてはFender ストラトキャスターやテレキャスターなどが挙げられます。

今のフェンダーギターの躍進はこのデタッチャブルシステムによる生産性の向上によるところも大きいと言えるでしょう。

画像のように4本のネジをネックプレートで受けるのが一般的ですが、メーカーやモデルによっては3本のネジで留めたり(通称3点留め)、プレートの代わりにワッシャーを使うこともあります。

セットネックとは違いネック自体をはずすことが容易なのでメンテナンス性にも優れ、ネックの反りなど状況に合わせてシム(スペーサー)を仕込み、ネックの仕込みネック角度を変えるなんて芸当もできますし、ネックだけ交換なんて荒業も可能です。

(ネック交換は組み込みの際に色々と調整が必要なため結局高価になることも多く、あまり一般的ではありませんけども)

結局ネックポケットとネック形状の精度によっても差が出るため一概にはいえない部分もありますが、音質的な面では構造上接着によって密着度が高くなるセットネックに劣るといわれています。

また、ヒール部分にネジ留めのためのスペースと厚みが必要なためハイフレット・高音域での演奏性の面ではセットネックタイプよりも若干不利な傾向があります。

(セットネックのGibson・デタッチャブルのFenderのイメージもあって意外に思われることもありますが、これは単にレスポールがシングルカッタウェイであるため)

が、近年では各社この段差の部分をより弾きやすいように削る・落とし込むなどヒールカットの手法を取り入れており、ハイポジションでの演奏性も改善されつつあります。

ギター・ベースのボディーとネックのジョイント構造まとめ

・ギター・ベースのジョイント方法にはセットネック、ボルトオン(デタッチャブルタイプ)、スルーネックの三種類がある

・セットネックは主にアコギやGibson系のエレキギターで使われる、ネックとボディーを接着する伝統的な構造

・セットネックはネックとボディーの密着度が高くなるため音質面では優れるとされるが、製造コストが高くなるため同クラスで比較する場合ボルトオンの楽器よりも高価になる傾向がある

・ボルトオンはFenderが開発したボディーにネックをネジ留めする手法で、生産性・メンテナンス性に優れ、コストパフォーマンスが高い

アコギやウクレレほか、バイオリンといった伝統的な弦楽器はよほど特殊なモデルでもない限りはすべてセットネックと思ってよいでしょう。

逆に言えば、ボルトオンやスルーネック構造で造られているのは基本的にすべてエレキギター・エレキベースです。

なお、冒頭でも軽く触れましたが、セットネック・ボルトオンのほかにもう一つのネックジョイントの構造として、スルーネックがあります。

(ジョイント方法といっていいかは微妙な構造ですが)

次回はこのスルーネックについて解説しますので、下記リンクよりぜひあわせてご覧になってください。