木材学 楽器の材と音の傾向・音響特性

2014年11月15日

木材の音響特性

ギター・ベースの指板やアコギのサイドバックによく使われるローズウッド

ローズウッド・メイプル・スプルース・アルダー・アッシュ……楽器には色々な種類の木材が使用されています。

木材は種類によって各自異なる音響特性を持っています。

かなりざっくりではありますが、今回は木材全体においての一般的な傾向についてまとめてみました。

なお、これは主にギター・ベースなどの楽器のイメージとして書いていますが、ギターやベースに限らず木材を使った楽器であればある程度共通しています。

 

木材の特徴と音色への影響

基本的な音響特性の傾向としては、

  • 堅い木材ほど音の立ち上がりが早く、アタック感の強い音響特性を持つ。
  • また、音の輪郭が明瞭になり、高音と低音のメリハリを利かせやすくなる。
  • 柔らかい木材は柔らかく暖かみのあるウォームなサウンドになりやすい。
  • 比重の重い木材ほど低音寄りの音響特性で、重厚なサウンドに仕上げやすい。
  • 比重の軽い木材は飛びぬけた低音はないが、中音域・高音域が埋もれることがなく比較的軽快なサウンドに仕上げやすい。

といった具合。意外とシンプル。

たくさんの楽器に触れている内に実感して自然に身につくので、なにも無理に詰め込まなくてもいい知識だとは思いますが、ぜひ頭の隅にでも入れて置いてください。

さて、シンプル過ぎてもう終わってしまいました。が、さすがに短すぎるので木材知識について少し注意点をば。

木材の音まとめ 注意1 良いか悪いかは受け取り手次第

上記のようにまとめると、柔らかい材は音がぼやけてメリハリの利かないダメな材と捉えられてしまうかもしれません。

また、比重の軽い材は音が軽くて使い物にならない、なんていう風にも思われるでしょう。

しかし、世の中には色々な音楽ジャンルがあり、それぞれに向いているサウンド、そしてそのサウンドに向いている楽器や木材があります。

カントリーで軽快なプレイを見せるところで、へヴィーなばかりの木材を使ったギターを使ってもしょうがないですし。それはそれで面白い音になるかもしれませんけど。

どんな音が出る材が良いのか悪いのかは、その楽器を使う人の好みによって違います。

もちろん「私はこういう材(音)が好き!」という趣向を持つのはなんら問題ありません。

が、趣味レベルではなく、楽器屋の店員になりたいとか、なんらかの形で音楽業界・楽器業界で働きたいという方は、良し悪しや好き嫌いは別にして、こういった特性がある、とニュートラルに捉えられるようになりましょう。

木材の音まとめ 注意2 木材には個体差がある。

これは管理人の言い訳というか免責。木材は天然の素材なので個体差があります

誰かに木材についての知識を披露する時は、その前提のもとに話した方が良いでしょう。今回紹介した傾向はあくまでも一般的な傾向であって、絶対ではありません。

個体差ばかりではなく、同じ種類の木でも育った場所や環境など、産地によっても音響特性は変化します。「 そんな役に立たない知識、憶えてもしょうがないじゃん! 」 と思うかもしれません。

例えば、普段あまり使われないような木材を使ってギターをオーダーする際や、「 こういう音がするギターが欲しいな 」という時など、どういう音に仕上がるかある程度は見当が付くよう、木材の特徴と楽器に使用した際の音響特性の相関関係についての知識は必要です。

楽器屋の店員としてお客様に案内する時はもちろん、これは自分自身の楽器を探す時にもこの知識は役に立つ知識です。

「 こういう材は大抵こういう感じの音に仕上がる 」 ということがイメージできるようになると、初めて見る楽器でも 「 この楽器はこの木材とこの木材の組み合わせだから、こういう音になりそうだなぁ 」 とイメージしやすくなり、色々考える楽しみも増えます。

是非色々な木材を使った楽器にたくさん触れて、もうスペックを見ただけでもどんなサウンドかイメージできるような、知識と経験豊富な素敵な店員を目指してください。