シングルコイルピックアップとハムバッカーの特徴と違い
シングルコイルピックアップとハムバッカーのサウンドの違いと特徴
ストラトキャスターやレスポール、ジャズベースなど、エレキギターやエレキベースには磁石とコイルを使ったマグネティックピックアップが搭載されています。
マグネティックピックアップには大きく分けて『 シングルコイルピックアップ 』『 ハムバッキングピックアップ (通称ハムバッカー)』の二つの種類があります。
今回はシングルコイルピックアップとハムバッカーの違いと特徴を解説します。
シングルコイルピックアップ
シングルコイルピックアップはマグネティックピックアップの中でも最も基本的でシンプルな構造。
弦の振動を音の信号に変える電磁誘導作用を起こすための磁石とコイルが1セットになっています。
形はストラトキャスターなどに乗っている一般的なものとは異なりますが、下記のピックアップもシングルコイルピックアップです。
- ギブソン社がハムバッカーを開発するまでレスポールに搭載していたP-90。
- テレキャスターのフロントピックアップ。
- ジャズマスターのピックアップ。
- ジャズベースのピックアップもシングルコイル。
シングルコイルピックアップのサウンド
シングルコイルピックアップは歯切れがよく明るいサウンドが特徴です。
サウンドが低音よりでウォームになりがちなハムバッカーに比べ、輪郭がはっきりとした粒立ちの良い硬めの音も作りやすい点が特徴。
また、弦とピックが触れた時のアタック音がハッキリするためピッキングの強弱を伝えやすく、繊細なニュアンスも表現しやすい素直さを持っています。
全体的に軽快なカッティングプレイや、クランチなど軽くナチュラルな歪みによく合うサウンドキャラクターです。
しかしながら、ハムバッカーに比べパワーがなくノイズに弱いデメリットが。
ノイズに弱い分、音を深く歪ませると音圧とともにノイズが大きくなってしまう弱点があります。
ハムバッキングピックアップ(ハムバッカー)
ハムバッカーは1956年頃にギブソン社によって開発されたピックアップで、構造的にはシングルコイルを二つ並べて一つにまとめた形状をしています。
その構造上ダブルコイルピックアップとも呼ばれます。
一般的に口では『 ハンバッカー 』と発音しますが、原語がHumbackingであるため記載上はハムバッカーが正確です。
ハムバッカーの特徴
ハムバッカーはシングルコイルピックアップに比べ出力が高い=パワーが強く、ハムノイズに強いことが最大の特徴です。
コイルが2つなので単純計算で出力はシングルコイルの倍ほどあります。
(※音量はアンプ他様々な回路で調整するため実際に音量が倍になるわけではありません)
同時にノイズもハムバッカーの二つのコイルにそれぞれ入ってくるのですが、片方のコイルだけノイズを反転させるように配線がなされており、ノイズを打ち消して減少させています。
ハムバッカーのサウンド
音の傾向としては、シングルコイルピックアップとはキャラクターが真逆です。
どちらかと言えば低音よりで柔らかくウォームなサウンド。
また、前述の通りパワーがあるので歪ませやすく、ノイズにも強いため深い歪みのサウンドを作りやすいのも特徴です。
反面、軽く明るいサウンドを作るのは苦手です。
シングルコイルピックアップとハムバッカーの一番の違いはハムノイズの差
両者の違いは前述の通りサウンドにも出てきますが、そこは好みもありますし、上記で十分でしょう。
やはりシングルコイルピックアップとハムバッカーの違いが最も明確に出ているのはハムノイズの面。
ハムバッカーは前述の通り、二つのコイルで同じ形のノイズの信号を正反対の形で合わせるため、打ち消し合ってノイズが減少されます。
適当な数字ですが、一つのシングルコイルで拾う音の信号がの大きさが10、ハムノイズが2だと仮定してみましょう。
ハムバッカーの場合、音の信号はコイルが二つなので「 10+10=20 」となります。
ノイズは片方が反転しマイナスになるので「 2+(-2) 」、つまり「 2-2=0 」で打ち消してしまうイメージです。
- 二つのコイルの位置が横にずれている点。
- コイルの巻き数の誤差やポールピースの磁力など個体差による微妙な出力差。
- ピックアップとは関係ない場所で拾うノイズ。
などの影響により現実には二つのコイルで拾ったハムノイズが全く同じ信号にはならず完全に排除はできません。
しかし、例えハムバッカーがハムノイズを消し切れず1残っていたとしても、シングルコイルのに残っているのは元のままの2のハムノイズです。
ノイズの大きさを計る考え方にS/N比(シグナル / ノイズ比)があります。
ざっくり言ってしまえば、音の信号とノイズの信号の大きさの比率でノイズの音がどれだけ目立つか。
この場合、ハムバッカーは音:ノイズが20:1で、シングルコイルは10:2に。
仮にシングルコイルの音の信号をハムバッカーと同じく20にするために増幅した場合、ノイズも同じ比率で増幅されて4になります。
同じ音の信号の大きさでノイズが 0.5 と 4 では大きな開きですよね。
(※数字はあくまでも例です)
ノイズを打ち消してくれるからといって必ずしもハムバッカーの方がシングルコイルよりもいい音ってわけではありません。
どんな音がいいかは音を造りたい本人の好みによるものですから。
そうでもなければシングルコイルピックアップは全て駆逐されてハムバッカーだらけになり、更に技術が進歩した今日では世の中のピックアップは全てハムバッカーになっているか、むしろ全てデジタル処理になってしまっていたはずです。
音の良し悪しではなく、あくまでも電気的な知識としては両者にはこのように差があると憶えて置くと良いでしょう。
シングルコイルピックアップとハムバッカーの特徴と違い まとめ
シングルコイルピックアップ
- 高音よりで硬めの粒立ちのハッキリしたサウンド。
- アタックがハッキリしていおり、ピッキングに素直に反応する。
- 軽快なカッティングやクランチに向いたキャラクター。
ハムバッカー
- 低音よりの柔らかくウォームなサウンド。
- パワフルで、クリーンサウンドでも存在感がある。
- ノイズに強いのでヘヴィーに歪ませるにも向いている。
ただし、これらはあくまで傾向であって、『 シングルコイルピックアップではヘビーな音は全く出せない 』『 ハムバッカーではカッティングできない 』わけではありません。
ピックアップごとのモデルによっても違いますし、ボディーの材や弦の太さ、セッティングなど他の要因によっても変わります。
あくまで一般的にはそういった違いや傾向がある、と憶えておいてください。
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