スタンバイスイッチと真空管アンプの電源の付け方

2017年5月7日

真空管アンプについているスタンバイスイッチって?

真空管アンプには『 スタンバイスイッチ 』がついている

小型のモデルなど一部のものを除き、真空管アンプには『 ON / OFF 』の電源スイッチの他に『 ON / STANDBY 』などと書かれたスイッチがあって戸惑うことがあるでしょう。

この ON / STANDBYのスイッチをスタンバイスイッチと呼びます。

両方オンにしてあげれば音は出るのですが、実はこの時オンにする手順を間違うと知らず知らずのうちに真空管を傷め、寿命を短くしてしまいます。

最悪アンプが故障し音が出なくなりますので、ご存じない方は必ず本記事をお読みになった上で、手順をお守りください。

真空管アンプの電源をつける手順 – スタンバイ状態で3分ほど放置!

結論から言えば、

1.スタンバイスイッチをSTANDBYに合わせた状態で電源スイッチをONにし、3分ほどおく(最低でも30秒)

2.スタンバイスイッチをONにする

3.レッツロック!

コレだけです。

このスタンバイスイッチ、言うなれば車の暖気運転のようなものです。

(トランジスタアンプ同様、スタンバイスイッチを上げる前はツマミ類は全て0にしておいた方がベター)

真空管の寿命が短くなりアンプの故障につながる?

電源をオンにしたあとすぐにスタンバイスイッチもオンにしても特に問題なく音は出ます。

ちょっとフェードイン気味というか、バイオリン奏法みたいにボリュームが上がってくる感じで。

しかしこの状況、真空管や不随するスピーカーなどのパーツにも負荷をかけている状況です。

まだ受け入れの準備もできていないのに、数百ボルトの電圧がかかることもあるのですから。

本来真空管は通電され十分に暖まった状態でその性能を発揮する=アンプ内の回路の増幅素子として働く非常にアナログなパーツ。

そこで、電源オン=真空管に通電と同時に音を出せるのではなく、音は出せない状態で通電・ヒーターで暖めて真空管を暖めるのがスタンバイスイッチなのです。

そこまで気にしなくても大丈夫?

先述の通り、真空管アンプの電源をオンにしてすぐにスタンバイスイッチを上げてしまうと、真空管に負荷がかかってしまいます。

となれば当然真空管の寿命が短くなってしまい、最後にはきちんと働くなくなって真空管の交換が必要になります。

なので可能な限りスタンバイスイッチは使ってやった方がいいでしょう。

大型アンプの真空管は基本的に回路上に二対一体で使うように設計されているため、交換となると2本ごとが基本。

真空管には個体差があるためその2本の特性のマッチングや真空管交換後のバイアス調整など微調整が必要で、真空管の金額 + 作業代金も必要で手間もお金もかかってかなり大変です。

反対に電源を消すときは?

反対に、スタンバイスイッチ付きのアンプの電源を消すときの手順です。

まず全てのツマミを0にしてから、スタンバイスイッチを ON から STANDBYに下げます。

そのあとで主電源のスイッチをオフにすればオッケー。

簡単に言えば電源をつけるときとは真逆の手順です。

ただ一つ違うことと言えば、電源を切る時はスタンバイスイッチのままで時間をおく必要がない点。

あとは真空管を冷ますだけで暖めておく必要もないので別段STANDBYの状態でおく必要がないのです。

なお、スタンバイスイッチはミュートスイッチとしても使うことも可能です。

STANDBY状態の時は音は出ませんし、シールドを抜き差ししてギターを取り替えてもオッケー。

もともと、スタンバイスイッチ自体ただ真空管の保護のためだけでなく、半分はこのために作られたようなもの。

Fenderによって始められた機能で、その後他のメーカーの大型真空管アンプにも搭載されるようになりました。

ただし、真空管や回路内に余計な負荷をかけないよう、最低でもマスターボリュ―ムとゲインツマミだけでも0にすることはお忘れなく。

これは真空管アンプに限ったことではありませんが、音が出る状態でシールドを抜き差しすると真空管だけでなくスピーカーにも大きな負担をかけ故障の原因になります。

真空管だけキレイに逝ってくれればいいが……

実際のところ、十回や十数回そこらスタンバイスイッチを使わずとも特に問題は出ません。

しかし日常的に繰り返すことは着実にダメージを与えてしまいます。

この時真空管がキレイに老衰でダメになってくれればまだいいんですが、そうなるとは限らないのが電気の世界。

真空管アンプを雑に扱い負荷がかかって真空管が故障してしまうと、異常な電圧がかかるなどにより付近のパーツにもダメージが波及する可能性があります。

基本的に大型のアンプで負荷がかかると予想される部分には耐電圧に余裕のあるパーツを使用しますが、異常によってはその電圧を上回ることはざらにあります。

最悪なのは 真空管がダメ → 交換する → 交換した真空管がすぐにダメになる ってパターン

実は真空管の異常やさまざまな要素が原因で真空管以外の回路も異常をきたしており、常に真空管に異常な電流や電圧がかかる状態になっているのです。

こうなるともう真空管の交換だけでなく、原因究明のためにオーバーホールレベルの全体の修理が必要になったりします。

真空管アンプの電源の付け方とスタンバイスイッチ まとめ

・スタンバイスイッチによる暖気運転を無視して音が出ていたとしても、真空管に非常に大きな負荷がかかり寿命を縮める

・電源を付ける前にまずスタンバイスイッチをスタンバイの方にあわせておく

・5分ほど待ってからスタンバイスイッチをオンに

・電源を消すときはツマミを全て0にし、スタンバイスイッチを下げてから電源をオフに

・電源を落とすときにはSTANDBY状態で待つ必要はない

今回は挙げた真空管の故障の例は決してレアパターンではなく、むしろ真空管アンプの故障ではメジャーなパターン。

真空管はもともと非常にデリケートなパーツで寿命があるもので、トランジスタアンプとは違ってある程度気を遣ってやらないと寿命を短くしてしまいます。

しかも寿命でダメになる分にはまだしも、変な負荷をかけてしまうと誤動作を起こして他を巻きこんだり他に巻きこまれやすいパーツなのです。

世の中にはスタンバイスイッチのない機種も多くありますし、実際スタンバイ状態で待たずに使ってもすぐに壊れるようなことはありません。

しかし、解説した通りスタンバイスイッチを使いこなした方が真空管の寿命的にはベターなので、可能な限り使っていきましょう。