アンプの種類 真空管アンプとトランジスタアンプ

2014年11月24日

真空管アンプとトランジスタアンプの特徴と違い

アンプとは信号を増幅するもの、ということは先日別記事(※)で解説した通りですが、その回路を構成する基幹パーツの種類により2つに分類することができます。(※詳しくはこちらを参照

その内一つが、真空管アンプ

そしてもう一つが、トランジスタアンプ

真空管アンプは耳にすることもあるかと思いますが、トランジスタアンプと単語はあまり耳慣れないかもしれません。

しかし、楽器用アンプには基本的にこの真空管アンプかトランジスタアンプかのどちらかしかありませんので、真空管を使っていないアンプ=トランジスタアンプという認識でいいでしょう。

今回は、これら真空管アンプとトランジスタアンプの特徴について解説します。

 

真空管アンプ

JCM800

定番の大型真空管アンプ Marshall JCM800

真空管アンプとは、プリアンプ部、パワーアンプ部の増幅回路の基幹パーツとして真空管を使用したアンプを指します。

チューブアンプとも呼ばれます。

ちなみに、プリアンプに使われる真空管をプリ管、パワーアンプに使われる真空管をパワー管などと呼びます。

中にはプリアンプのみに真空管が使用されるなど、完全には真空管アンプではない、というば場合もあります。

こういったものと区別するため、プリアンプ、パワーアンプの双方に真空管が使用されたものの場合はオールチューブなどと呼ばれます。

最大の特徴はやはりそのサウンドでしょう。

真空管ならではの暖かみがあり、柔らかいサウンドが持ち味で、多くのミュージシャンに愛されています。

真空管自体は技術としてはかなり古いもので、無線やラジオ等さまざまな機器にも使用されていました。

その後トランジスタの登場により、ほとんどの機器では真空管からトランジスタへの移行が進みましたが、真空管ならでは暖かみのあるサウンドがトランジスタでは得難いこともあり、オーディオアンプや楽器用アンプなどの音響機器ではいまでも真空管が多く使用され、多くの人々を魅了し続けています。

後述するトランジスタアンプに比べると信号を再現できる帯域が狭かったりと電気的な面で考えればあまり良いものではありませんが、最終的に出てくる音は真空管の方が人気があるんですから、人の耳と言うのはなかなか面白いものです。

ただし、真空管自体がガラスで出来ているためかなりデリケートで、物理的な衝撃に弱いなど扱いが難しいのが難点。

扱いが難しく、トランジスタアンプに比べ高価なこともあり、人気の割には個人需要は少ないのが実情です。

また、音質面だけではなく音量面でもトランジスタアンプとの違いがあります。

基本的には真空管アンプの方が小さなワット数でも音量を稼ぐことができるのです。

100ワットクラスなど大型のアンプを使うような環境となると必要とする音量が頭打ちになってくるためそれ程差異を感じませんが、小型であればある程その差は顕著になります。

自宅で練習等で使うようなギターアンプであればトランジスタアンプでは10~15ワットというのが一般的ですが、オールチューブのギターアンプの場合5ワット程度の出力で同等の音量と音圧を得ることができます。

トランジスタアンプ

Roland JC120

スタジオ・ライブハウスでも定番のRoland JC-120もトランジスタアンプ

増幅回路の基幹パーツに真空管ではなくトランジスタを使用したアンプがトランジスタアンプです。

こういった真空管が入っておらず、半導体を使って設計・製造される回路をソリッドステートとも呼びます。

デリケートで壊れやすいチューブアンプとは違いパーツの劣化もほぼなく、故障に強いので扱いやすいことが特徴。

頑丈なトランジスタアンプの代表といえば、スタジオやライブハウスなんかにはほぼ確実に置いてあるRolandのJC-120でしょうか。

ここまで定番化した要因はJC-120の持ち味であるコーラスサウンドももちろんありますが、何よりもその異常な程までの耐久性が多くのスタジオ・ライブハウスの経営者にとって都合がよかったからというのが大きいのです。

実際、JC-120はほぼノーメンテナンスで数十年以上稼働している個体もよく見かけます。

JC-120の例は極端だとしても、大抵のトランジスタアンプは普通に使っていれば壊れることはそうそうありません。

真空管アンプの場合は衝撃などにも気を遣わなければいかず、どんなに気を付けて使っていても真空管の寿命による交換などメンテナンスが必要となりますので、その扱いやすさは比べるまでもないでしょう。

また、トランジスタアンプは非常に安価に製造できることも特徴です。

小型の物でも数万はするオールチューブのアンプに対し、数千円程度から入手可能。

大型のものでも、120ワットのトランジスタアンプであるJC-120が10万円程度。

同じくライブハウスなどで定番のマーシャルの真空管アンプJCM800だと、スピーカーキャビネット抜きでもその倍の20万円程度はします。(※執筆時点の売価の目安です)

サウンド面では、暖かみがあり柔らかいサウンドを持つ真空管アンプに比べ、冷たく硬い、ある種クールともいえるような音響特性を持っています。

まとめ

・真空管アンプは真空管ならではの暖かみがあり柔らかいサウンドで人気があるが、高価で扱いにくい。

・トランジスタアンプは安価で扱いやすく、小型化しやすい特徴を持つが、サウンド面では真空管の方が人気がある。

こういうわけですので、扱いやすく安価なトランジスタアンプで真空管アンプの音を再現しようという試みは長く続いております。

が、やはり真空管の特性・サウンドをソリッドステートで完全に再現するのは難しく、現代のデジタル技術を駆使したアンプでもその域には達していないと言われています。

この様に書くと真空管の方が音が良く、トランジスタアンプは良くない、なんて風に理解されるかもしれません。

確かに真空管アンプの方が人気は高く、真空管の方が音が良い、というのが一般的な声ではあります。

しかし、音の良し悪しや使える使えない、ということを決めるのは結局は個々の感性。

実際、真空管よりもトランジスタの音の方が好きだ、ということでトランジスタアンプを愛用しているプロのミュージシャンもたくさんいます。

趣味の世界ですから好き嫌いがあること自体は全然問題はありませんが、趣味の世界だからこそ一概に優劣をつけられない部分があるということは忘れないにしたいところです。