ギター・ベースの弦の太さによる5つの影響

2014年8月1日

弦の太さを変えると具体的にどうなる?

弦には色々な種類があります。素材や太さ、製造法の違い、コーティングを施したもの etc…

メーカーや種々の弦によって色々な違いはありますが、最も違いが分かりやすいのは弦の太さでしょう。

太さを一段階変えるだけでも、色々なことがかなり変わってきます。

今回はここに焦点を当て、弦の太さがギター・ベースに及ぼす影響について解説します。

 

弦の太さの変化によるギター・ベースのサウンド・演奏性・ネックへの影響

1. サウンドへの影響

太さによってテンションが変わる分、当然サウンドにも影響します。

最終的にはどういう音を出したいかや好みによるのでどちらが良い・悪いということはありませんが、傾向としては憶えておいた方がいいでしょう。

弦が太ければその分張りが強くパワフルなサウンドになり、低音域もしっかり出すことができます。

弦が細ければその分張りが弱く線の細い繊細なサウンドになり、低音が多少弱い分、高音域が強調されて聴こえます。

2. 弦の硬さと演奏性への影響

弦の太さによる押弦のしやすさ・弦の硬さ

弦の硬さ・柔らかさは特に押さえやすさ、ひいては演奏性に直結した要素です。

弦が太ければ太い程テンションが高くなるため、押弦時の抵抗感が強く、硬く感じます。

逆に、弦が細いとテンションが低くなり、弦が柔らかく感じるようになります。

弦を押さえる指が痛い時は、細い弦に変えることによって押さえやすく演奏しやすくなります。

弦が硬ければ硬い程押さえる時に力が必要になり、また指が痛くなるので、細い方が楽に弾けます。

(練習で慣れれば指の皮が硬くなってあまり気にならなくなりますが)

この性質は特に初心者が弦の太さを選ぶ際に重視したいポイントですね。

逆に、テンションを稼ぐ必要がある場合など、あえて太い弦を使う場合もあります。

例えば1音や2音など大きく音を下げるようなドロップチューニングの場合は、弦のテンションがかなり低くなりゆるゆるになってしまうので、その対策として通常より太いゲージの弦を張ることが常套手段となっています。

3. ネックの反りと弦高への影響

弦のテンションに対する理想的なネックの状態

ここからはちょっと小難しい話になって申し訳ないのですが、要は
『 弦の太さを変えるとネックが反って、弦高が変わるかも知れないから気を付けてね 』ってことです。

小難しい話はキライ!な方は読み飛ばしちゃってください。

弦の太さを変えることによって地味に影響が大きいのが弦高です。

弦の太さが変わった分、弦の下端からフレットの高さ=弦高が変わる、という単純な話ではありません。

弦のテンションはネックの反り具合に密接に関わっています。

基本的にチューニングが合っている状態ではネックはかなりの力で引っ張られ、弦側に向かって反っている状態となります。

なのでネックはチューニングした時に真っ直ぐになるよう調整されており、弦を張っていない時はネックは逆反り状態です。

弦の太さを変えるとテンションが変わり、この引っ張られ具合が変わるためネックの反り具合も変化し、その分弦高に影響するのです。

弦の太さによる具体的な弦高の変化

太い弦を張った場合のネックの反り方

細い弦を張った場合のネックの反り方

太くする: ネックが順反り弦高が高くなるため、押弦しづらくなる。弓なり状に変化するので、特に5F~12F辺りの変化が大きい。

細くする: ネックが逆反り弦高が低くなるため、押弦はしやすくなるが、押さえた次のフレットに弦が触れてしまいビリつきを起こしやすくなる。

いずれにしても、ハイフレットに向かって少しずつ均一に高くなるはずの弦高のテーパーが歪んでしまうため、よくない状況です。

演奏上影響がない程度であれば問題ありませんが、もし違和感を感じるようであればトラスロッドで反り具合を調整してやる必要があります。

ネックは木材でできているので個体差がありますが、こういった傾向があることは憶えておきましょう。

4. ストラトキャスター、ロック式ギターのブリッジのフローティングへの影響

ストラトキャスターシンクロナイズドトレモロブリッジのフローティング

フローティング状態のブリッジ。ブリッジのお尻が数ミリ浮いている。

これはストラトキャスターに搭載されたシンクロナイズドトレモロやロック式ギターなど、ブリッジがフローティング(ボディーから浮いている状態になっている状態)したギターやアーミングが可能なギターにのみある影響です。

ネックと同じような話なのですが、弦のテンションが変わるためフローティング=ブリッジの傾き具合が変わってしまうのです。

弦が太くなりテンションが上がると弦に引っ張られてブリッジが弦側に傾き、弦が細くなるとボディー側に傾きます。

ブリッジの傾きが変わるとコマごと動きますので、弦高のみならずオクターブチューニングも微妙に狂い、音程の正確さにも影響します。

弦のテンションに対抗するバネがボディー裏のパネルの下に入っているのでこのバネの調整が必要になります。

特にロック式ギターの場合は太さを変えるとすぐにフローティングの具合が変わるので、弦のゲージを変えた際は調整が必須と思っておいてください。

ストラトキャスターの場合はフローティングさせず常にボディーにつけたセッティングしていることもあると思いますが、それでも今までよりも太い弦を張るとブリッジがフローティングしてしまうことがあるので注意が必要です。

逆に、フローティングしているセッティングの時により細いゲージの弦に替えると、バネの引っ張る力の方が強くなってフローティングがボディー本体側に傾き、そのままボディーにつく可能性もあります。

フローティングをさせていないのであれば、細い弦に張り替える分にはそれ以上ブリッジは動くことはないので特に調整は不要です。

5. ナット溝への影響

ギターやベースのナットは基本的に工場出荷時に張る弦に合わせて溝を切るなど、弦に合わせて成形されたものを使用しています。

なので、極端にゲージが変わる場合、弦が太くてナット溝にうまくはまらなかったり、逆に弦が細く過ぎて中で動いてしまいビビりの原因になる場合があります。

よほど極端に弦の太さを変えるのでなければそう出る影響ではありませんが、違和感を感じた最はナット溝の状況を確認しましょう。

まとめ

もうお気づきだとは思いますが、弦の太さを変えることによって起きる影響のほとんどはテンションが変わることによるものです。

なので、エレキギターのように弦の太さという概念ではなく弦のテンションの強さで商品が分けられているクラシックギターなどでも同様の影響を受けます。

特に2番の弦の硬さと3番のネックの反りによる弦高の変化は、演奏しやすさに密接にかかわっています。

弦を細くすると柔らかくなり、弦高も低くなるので弾きやすくはなりますが、ビビりが出やすくなるので注意です。

逆に太くした場合、弦が柔らかく、ネックが順反るため弦高が高くなり弾きづらくなります。

大抵の場合はネックの反りを適切に調整してやれば問題ないのですが、

『 ビビっちゃうからこのギターに細い弦はダメだ 』『 すっごい弾きづらくなるから太くしちゃダメだな 』

と早とちりしてしまう原因にもなっています。

反り方は楽器ごとのネックによって個体差がありますが、弦の太さを変えた場合は一度ネックの反り具合や弦高に問題がないかを確認しましょう。

もちろん、演奏しても特に問題を感じないようなら調整は必要ありません。

もし異常があるのか正常なのか判断が難しい場合は、楽器店等に持ち込めばスタッフが確認してくれます。

逆に、これを読んでくださっているあなたが楽器屋の店員を目指す人であれば、こういう傾向によりこういう影響があることをしっかり把握し、弦の太さについて悩みを持つお客様の希望に応える際の参考になれば幸いです。