ラッカー塗装は本当に音がいい?ギター・ベースの塗装の役割と音との関連性
ポリ塗装は音が悪くてラッカー塗装は音が良い?
「 ラッカー塗装は音が良いって聞くけど本当に音がいいの? 」
「 ポリ塗装は音が悪いって本当? 」
などという質問をよく受けます。
音の良し悪しは個人の好みがあるため一概には言えませんので、あくまでも一般論として……
というお決まりの断りもしつつではありますが、ポリ塗装よりもラッカー塗装の方が音が良い傾向があるのは確かです。
なお、各塗装についての細かい話しはこれまでの記事で解説しています。
まだご覧になっていない方は、ぜひ併せてご覧ください。
そもそもの塗装の役割
塗装のそもそもの役割は、楽器に限らずその下地となる本体の保護です。
本来、保護のための塗装として考えればなによりも耐久性が大事で、楽器の場合は特性上はどう考えてもポリ系の塗装の圧勝です。
そういった意味では、製造コストがかかるため高価になり、デリケートで扱いづらいラッカー塗装にはあまりいいところはありません。
それでもラッカーがポリ塗装に淘汰されず人気を保っているのは、音響的に優れた塗装だからというのが一番の理由でしょう。
実際、ラッカー塗装は音がよくなる要素を備えています。
塗装の質と音の関連性
極端な話、保護だけ考えるなら柔軟性と硬度を兼ね備え、耐久性の高い塗料をてんこ盛りにすればOK。
が、塗装は厚ければ厚いほど楽器そのものの振動を妨げてしまうため、塗膜はなるべく薄い方が良いのです。
保護するには厚くするのがいいけど、音が悪くなってしまうというジレンマ。
しかし楽器の主目的な音を鳴らすことなので、実際には塗膜が薄い方が人気があります。
もう一点、塗膜もいわば楽器の一部ですから、その硬度も音に関係してきます。
塗膜が柔らかいと同様に楽器の振動を妨げてしまい、音がこもったようになりがち。
逆に塗膜が硬ければ楽器の鳴りを妨げずレスポンスが向上し、音抜けがよくなります。
さて、これらを踏まえた上で、ラッカー塗装が何故音が良いのかを考察していきましょう。
前回の – ラッカー塗装の特徴と注意点 – でも解説しましたが、ラッカー塗装はシンナーの揮発によって硬化する仕組みです。
完成後も少しずつシンナーが抜けていくのですが、その分塗膜が縮んでいきます。
その分塗膜が当初よりも薄く硬くなるため、楽器本体の鳴りとレスポンスが向上するするのです。
このラッカーの塗膜が縮む経年変化を、ラッカーの痩せと呼びます。
(よくビンテージのギターの音や鳴りがいい要因について議論がなされていますが、塗装の痩せも少なからず関連しているというのが管理人の持論)
一方、ポリ塗装は吹きつけた塗料がそのまま硬化しすぐに安定するため、完成後硬さや薄さが変わることはありません。
同じ厚みで塗膜を作ったとしても、後々ラッカー塗装の方が薄くなるのです。
また、ラッカーの経年変化が進むにつれてポリ塗装よりも硬くなります。
製造コスト・耐久性・メンテナンス性を考えればポリ系塗装の方が優秀ですが、理論上ではサウンドのことを考えればポリ塗装よりもラッカー塗装の方に軍配があがるということになります。
まとめ
・楽器の保護という塗装の本来の意味ではポリ塗装の方が優れているが、ラッカーは経年変化により塗膜が薄く、硬くなっていくので、音響面では有利
ただ、誤解してほしくないのは、だからといってポリ系の塗装の音が悪いわけではないという点。
こういう話をすると「 ラッカーは音がいいのか。じゃあポリ系の塗装はダメなんだな 」と思われがちですが、あくまで理論上ラッカー塗装がポリ塗装よりも音質面で有利な性質を持っているのあって、ポリ塗装が音が悪いというわけではありません。
楽器の良し悪しを決めるには最終的な出音と演奏性、そしてメンテナンス性や耐久性など総合的に考える必要があります。
そりゃあ管理人だってもらえるなら塗装はラッカーの楽器がいいと答えますけど、楽器の選び方で最も大事なのは使う人にとっていい音がする楽器か、演奏性はどうか、それに見合った価格かであり、ラッカー塗装であるかポリ塗装であるかで要素の一つでしかありません。
実際ポリウレタン塗装でも厚みを極薄に仕上げた楽器も多く出回っておりますし、メンテナンス性や耐久性、コスパなど、総合的に考えればすごく優秀な塗装方法です。
深く理解せずにスペックに偏重した考えを持ってもそういいことはありませんので、注意していきたいところです。
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