楽器業界とOEM・ODM

2015年9月7日

OEM・ODMとは

楽器業界にいると、時折OEM商品だのなんだのって単語を耳にすることがあります。

OEMとはOriginal Equipment Manufacturingの略で、企業が業者へ商品の製造を委託することを言います。

あまり耳慣れませんかもしれませんが、似たような言葉でODMというものもあります。

こちらはOriginal Design Manufacturingの略で、デザインも含めた製造を委託することを言います。

ただ、楽器業界ではODMという言葉はあまり使われず大抵全てOEMと言われます。

なお、OEM・ODMといった言葉はもともと楽器業界専門の言葉ではなく、商業界全般で使われる専門用語です。

楽器業界におけるOEM KORGとYAMAHAのチューナー

楽器業界OEMの例_YAMAHA_TDM-75とKORG_TM-50シリーズ

YAMAHA TDM-75(画像上)とKORG TM-50(画像下)

楽器業界でのOEMの最たる例はYAMAHAとKORGのチューナー関連ですね。

実はYAMAHAがKORGに一部のチューナー、チューナーメトロノームの製造を委託しているんです。

で、KORGは自社の商品と全く同じ物をブランド名・型番を変えてYAMAHAへ卸しています。

見た目もカラーとブランド名の部分、モデル名の部分など細かい部分を除いて完全に同じ。

製造だけでなくデザインもKORGが行っていますから、ODMと言うのが正確かもしれません。

面白いことに、ユーザーの楽器によってKORGかYAMAHAかの好みが分かれる傾向があります。

主にKORGはギターやベースなどの軽音楽系の楽器ユーザー、反対にYAMAHAはバイオリン、チェロなどオケ系の弦楽器や管楽器ユーザーに注力して売れているような印象ですね。

KORGはチューナーのみならずエフェクターなどの周辺機器も造っていますから、ギターやベースを弾く人にはその辺の馴染みが深いのが要因でしょう。

反対にオケ系の弦楽器KORGにはあまり馴染みがないし、有名なYAMAHAに流れるのでしょう。

管楽器はそもそもヤマハが管楽器造ってて馴染みがあるから納得です。

楽器店がこの傾向に従ったお店づくりをしているためにそうなっている面も少なからず影響しているでしょう。

その他のOEM・ODMの例

先述の通り楽器業界でのOEM・ODMの最たる例はKORGとYAMAHAのチューナーです。

しかし、他にも細々としたところまで挙げていったらかなり多くありあmす。

最近は楽器店で入門用の楽器のオリジナルブランドを持って販売していたりしますが、これもどこかの問屋や工場に委託し、他のブランドの商品と同じ物をブランドを変えて売っている場合が結構多いです。

公表されていないことなので固有名詞は挙げられませんが、例えば国内に自社工場を持っていてもA社もB社も、入門用・廉価版の楽器は中国の同じ工場で製造されていたり。

もちろん、こういう場合はブランドロゴの部分は変えますし、ラインナップや価格設定などの兼ね合いで多少仕様が変わったりするんですけどね。

全く同じモデルでも、ブランド力の違いで値段が違ったりもするから、裏事情を知っているとちょっと面白い。

日本にある工場でも、例えばC社のギターを専門で造っているはずの工場がD社のギターも造っている、なんて例も特に珍しくないんですよね。

他にも実力のある工房では独自ブランドの楽器を作りながら、他社ブランドの楽器の製造を請け負うこともあります。

これもある意味ではOEM、ODMですね。

また、OEMとはちょっと違うかもしれませんが、某コーティング弦なんかは、某社の弦を仕入れてコーティングをかけているなんて話も。

「 そんなんでいいのか…… 」と思うような話でもありますけど、今でも普通に行われていることです。

楽器業界におけるOEM まとめ

・OEMとは、ある商品の製造を他社へ委託することを言う。そういった商品をOEM商品と呼ぶ

・デザインも委託した場合は正確にはODMとなるが、楽器業界ではいっしょくたにOEMと呼ぶことが多い

工場の稼働率だったり、各社同士の取り決めだったり、色々な事情はあると思いますが……

その辺りを決めるのはどこの会社でも上層部ですし、大人の事情ってヤツですかね。

特にこれから楽器業界を目指すみなさんは、そういうこともあると頭に入れておいた方がよいでしょう。