【輸入楽器の正規ルート】正規輸入代理店と日本現地法人
楽器業界に欠かせない輸入代理店という存在
さてさて、これまで数回に分けて楽器業界におけるメーカーとかブランドとか、卸問屋のお話なんかもしてきました。
そして楽器業界を回す上で欠かせないのが、輸入代理店とメーカーの日本現地法人いう存在です。
輸入代理店も日本現地法人も、海外ブランドの商品を日本で販売するにおいてに重要の役割を担っています。
今回はこの輸入代理店と日本現地法人について解説します。
輸入代理店と日本現地法人
楽器をやっているみなさんであれば、海外の高級ブランドの名前もある程度ご存じかと思います。
サックスのH.Selmer、トランペットのV.Bach、エレキギターのFenderやGibson、アコギのMartin、ウクレレであればKoAloha などなど・・・
国産メーカーのブランドでも人気のある楽器は多くありますが、これら海外発祥の洋楽器は、やはり本場の高級ブランドのものが根強い人気を誇っています。
これら高級ブランドの楽器は海外の製品ですから、当然日本で販売するにはまず輸入をする必要があります。
海外メーカーの視点からみれば日本への輸出ですね。
で、今回のお話の軸はその正規輸入ルートのお話。
どんなに大手の楽器メーカーでも、全世界にある楽器店一店舗一店舗と個別に取り引きをして輸出をするなんて無茶はしていません。
たった一つの企業が全世界の各楽器店と個別に取り引きをしようと思ったら莫大な労力が必要で非効率的ですし、現実的に無理があります。
日本の場合、海外のメーカーが各国に楽器店に向けて商品を卸す方法として大きく分けて二つあります。
日本現地法人を設立するという方法と、輸入代理店を立てるという方法です。
日本に現地法人を置く
まず、日本に現地法人を設立するという方法。
日本に支社のような形で会社を置き、その会社を経由して商品を直接商品を卸す方法ですね。
この現地法人の社員たちが、現地の楽器店達からの要望や注文をまとめて本国のメーカー本社に伝えたり、本国(もしくは商品の生産地)から入荷された商品を楽器店へ卸すのです。
その国でのブランド商品の広報活動や、入荷した商品の検品、修理対応などのアフターサービスなんかも、この現地法人が行います。
具体例としては、レスポールなどエレキギターで人気のGibson社はGibson Guitars Japan Corp、通称ギブソンジャパンという日本現地法人を設立し、2007年頃からはこの現地法人方式で商品を日本へ輸入しています。(2015年1月執筆時点)
輸入代理店・正規輸入代理店
もう一つが、正規輸入代理店を立てるという方法。
この正規輸入代理店という言葉は聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
ざっくり言うなれば、本来メーカーが行うべき仕事を日本のどこかの企業に任せちゃうというイメージです。
この場合、輸入代理店は本国メーカーとは別会社ではありますが、卸問屋のようにただ商品を仕入れて楽器店に卸す、というだけの仕事ではなく、本国のメーカーが日本で行うべき仕事もほとんどすべて請け負うことになります。
実際に輸入代理店がどこまでやるかの細かい線引きはメーカーと輸入代理店の契約で決まっていますが、基本的に日本でのそのブランド関連の仕事は全て正規輸入代理店がやるというイメージで問題ないでしょう。
具体的に挙げると、
・輸入された商品の検品と調整などの品質管理
・各楽器店や卸問屋への卸業務
・品質保証制度の管理と楽器の修理、商品に対するクレーム対応などアフターサービス
・現地での広告やホームページ運営などのマーケティング
この辺りの仕事は大抵その国の正規輸入代理店として指定された会社が行うのが一般的。
輸入代理店とは言っていますが、輸入を代理するというよりは、そのメーカーそのものの代理といったところ。
本国のメーカーからしてみれば輸入代理店は単なる窓口というだけではなく、メーカーとブランドの看板を背負ってもらうことになりますので、受注・出荷の体制や修理などのアフターサービスの体制など、代理店業務がきちんとできるかどうかを見極め、厳しく選出します。
代理店側は正規輸入代理店となった場合、ブランドによっては契約金やノルマなどの多くの条件があり、外国の企業との折衝・取り引きとなるため、有名なメーカー、人気のあるブランド商品であればあるほど正規輸入代理店として参入するハードルは高いといえるでしょう。
しかし、そのメーカー・ブランドの商品を一手に引き受け、正規ルートとして日本で販売する権利が得られますから、それに見合ったメリットはあると言えます。
なお、正規輸入代理店として選ばれるには、本国のメーカーの条件さえクリアできれば、卸業務がメインの会社でなくても問題はありません。
例えば自社のブランドを持っている日本のメーカーであったり、卸問屋であったり、果てには楽器店が正規輸入代理店なんてブランドもあります。
参考までに、いくつか有名ブランドの正規輸入代理店を挙げておきます。
なんとなく感じを掴んでいただければと思います。
有名な海外メーカー、高級楽器ブランドの輸入代理店の例
Fender(エレキギター) – 山野楽器(卸)
Martin(アコギ) – クロサワ楽器(楽器販売店)
Marshall(アンプ) – ヤマハミュージックジャパン(楽器メーカー)
Zildjian(シンバル) – ヤマハミュージックジャパン(楽器メーカー)
H.Selmer(サックス) – 野中貿易(卸)
Vincent Bach(トランペット) – 野中貿易(卸)
Willson(ユーフォニアム) – グローバル(卸)
Besson(ユーフォニアム) – ビュッフェグループジャパン(B.Crampon日本現地法人)
括弧内はそのブランドの主な商品と、企業の主な業態です。
(管理人の記憶に頼ったものなので、実は非正規とか間違いがあったらゴメンナサイ)
ご覧のように、色々な企業が色々なブランドを扱っているのがお分かりいただけるかと思います。
楽器販売店なのに代理店として卸業務もやっちゃうクロサワ楽器。
ビュッフェグループジャパンなんて、Buffet Cramponブランドを日本で扱うための現地法人でありながら、他社製品であるBessonブランド商品の代理店もやってたりとか。
結構なんでもアリです。
※これらは執筆時点でのものですので、代理店や社名が変わってしまう可能性もあります。
まとめ
・海外メーカーが日本で商品を販売する場合、主に方法は二つある。
1.現地法人と言う形で海外メーカー自ら会社を設立し、この現地法人を介して商品を卸す方法。
2.正規輸入代理店と言う形で、現地の企業に現地でのブランドの運営を任せる方法。
ちなみに、日本の楽器業界での場合、現地法人による輸入ではなく、正規輸入代理店で輸入し取り扱っているブランドの方が圧倒的に多いです。
現地法人を立てている例としてパッと思いつくのは、先に挙げたGibsonののギブソンジャパンの例と、Buffet Cramponクラリネットを取り扱うビュッフェ・グループジャパン、もう一社エフェクター BigMuff で有名なエレクトロハーモニクスを扱う日本エレクトロハーモニクスの例くらい。
しかも、エレハモの場合は日本エレクトロハーモニクスという日本法人がありながら、今はエレクトロハーモニクス商品は卸さず、別の卸問屋が輸入代理店を行っているという謎の状況になっています。
他国に会社を設立したり支社を置く、というのはリスクも大きいのでしょうし、日本の顧客は細かいところにうるさいとよく言われますから、やはり日本の楽器業界とサービスレベル、顧客についてよく知る現地の企業に任せた方が無難なのでしょう。
さて、今回海外メーカーの現地法人と、正規輸入代理店について解説しました。
もしかしたら他にも特殊なルートもあるかもしれませんが、基本的にはこの二つのどちらかが正規のルートとして存在していると思ってください。
なお、こうして正規のルートを通って入ってきた商品が正規輸入品と呼ばれるものです。
輸入品は何も正規輸入品ばかりとは限りません。
次回から楽器業界で流通している輸入品の種類、その輸入方法や特徴について解説します。
楽器業界にいれば必ず関わることのあることですので、ぜひお読みになっておいてくださ。
下記リンクよりどうぞ。
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