卸問屋を使う2つのメリットと役割

2015年1月12日

卸問屋による楽器業界へのメリット

前回の記事( – 楽器業界の卸問屋とは – )で 『 楽器店は楽器メーカー直よりも卸問屋から仕入れた方が安くなる!? 』というちょっと極端な例を挙げました。

この例では卸問屋が間に入ることで楽器店と卸問屋にはメリットがありましたが、楽器メーカーは何も得をしていません。

むしろメーカーは損をするばかりで何もいいことはなし。

このように同じ商品なのにメーカーよりも卸問屋の方が卸し価格が安いなんて極端な例はさすがにそうそうないにしても、卸し価格が同じということは商品や条件によってはよくあることです。

その場合でも結局は楽器メーカーにとっていいことはありません。

これでは卸問屋はメーカーにとって害悪でしかない存在、というところですが、実際にはそうでもありません。

実際には卸問屋は楽器メーカーと楽器店の双方にとってメリットのある存在です。

卸問屋が楽器業界で具体的にどのような役割を担い、どのようなメリットがあるのか。

今回は具体例を交えつつ、解説していきます。

1.メーカーと楽器店、双方の手間を省く

実は卸問屋はメーカーと楽器店、お互いの取引の手間を省いてくれる役割も持っています。

例えば、A社とB社というメーカーがあったとしましょう。

(※ここから先に出てくる卸問屋や楽器店の固有名詞各楽器の名前も管理人が適当に思いついた架空のものです。実在しませんし、もし実在したとしても全く無関係です)

ある日、A社に関西の楽器店 梅田楽器と近畿楽器、東京の渋谷楽器と丸ノ内楽器から注文がありました。

注文がたくさんあることは会社としては嬉しいのですが、担当者はそれだけ仕事は増えてしまいます。

ああ、忙しい忙しい。仕事が嫌になってしまうかもしれません。
本サイトの管理人のように。

一方、もう一つのメーカーB社。

このB社は、東京近郊の楽器店に強い東京屋という卸問屋と、関西方面に強い大阪屋とつながりがあり、うまく卸問屋を利用しています。

そして、先ほどA社に商品を発注した関西の梅田楽器と近畿楽器、東京の渋谷楽器と丸ノ内楽器はメーカーB社の商品も扱っています。

が、B社は東京屋と大阪屋だけに商品を卸し、この楽器店達には直接商品を卸していません。

東京にある渋谷楽器と丸ノ内楽器は東京屋から、関西にある梅田楽器と近畿楽器は大阪屋からB社の商品を仕入れているのです。

これで、メーカーB社はA社と同じ4店舗の楽器店で商品を販売してもらいながらも、商品を出荷するなどの注文の対応は卸問屋2社に絞り、その手間を減らしています。

A社は楽器店4店舗に商品を置いてもらうために、楽器店4店舗の注文に対応。

B社は楽器店4店舗に商品を置いてもらうために、卸問屋2社の注文に対応。

同じ楽器店4店舗に商品を置くという同じ結果で、対応の手間は半分。その差は一目瞭然ですよね。

このメリットを享受できるのは楽器メーカーだけではありません。

楽器店も各商品を造っている各メーカー全てと個別に取引をするとなると、メーカーA社に連絡してB社に連絡してC社に連絡して……と言った具合に忙しくなってしまいます。

仕事が嫌になってしまうかもしれません。
本サイトの管理人のように。

しかし、色々な商品をまとめて扱っている卸問屋と付き合いがあれば、あちこちのメーカーに連絡せずとも卸問屋に一括して注文を伝えるだけで済みます。

商売において、手間というのはつまり人件費=コストに繋がるので、手間は少なければ少ない程良いこと。

取扱い商品数を減らさずに取り引き相手を減らす、つまり手間は減らして同じ結果を得られるというところが、楽器店とメーカーにとっての卸問屋を使うメリットの一つです。

2.メーカーにとって販路拡大に役立つ

もう一つ、卸問屋がメーカーや卸問屋は持つ多くのメーカーや楽器店とのつながり。

卸問屋は各メーカーの商品を付き合いのある楽器店へ色々と紹介するので、楽器店は特にその商品のメーカーとつながりがなくても、新商品の情報を得たり、新たに仕入れることができます。

逆に、メーカーは卸問屋との付き合いがあれば、いちいち色々な楽器店に自社の商品をその卸問屋商品を卸している楽器店に売り込まずとも、間接的につながりを持つことができます。

楽器メーカーはこのつながりを利用してより多くの楽器店に商品を送り出し、楽器店はより多くの商品を取り揃えることができる、というわけです。

卸問屋とただの転売屋の一番の違いがここ。

売り手である楽器メーカーと買い手である楽器販売店をつなぐ、それが卸問屋にの最も大きな役割と言えるでしょう。

大手メーカーと小規模な楽器店の場合

例えば、ブランド力の強い商品を持つ大手メーカーと、あまり規模の大きくない楽器店の取り引きの場合。
(この例は前回卸問屋の役割についてざっくりと解説した時の話とかぶる内容もありますが、復習だとでも思って読んでみてください)

前述の通り、メーカーとしては、受注・出荷を対応をする手間とコストを考えれば取り引き相手は少ない方がいいです。

が、やはり自社が持つ商品をより多く売って儲けるためには少しでも多くの楽器店に商品を扱ってもらいたいところ。

手間を考えれば細かい取り引きは少ない方がいいけど、商品は色々な楽器店に置いてもらいたいというジレンマです。

一方、規模の小さい楽器店としては、楽器メーカーから商品を安く仕入れるには、仕入れの数など色々と条件をクリアする必要があります。

小規模楽器店が単独でこの条件というのがハードルが高い。

そこで、卸問屋がメーカーから一度にまとまった数の商品を安く仕入れ、規模の小さい楽器店が希望する小さい数量で卸すのです。

大手楽器メーカーからすれば、色々な小規模な楽器店へのこまごまとした対応はせずとも小規模な楽器店にも商品が行き渡るので、先ほどのジレンマから解放されることができるのです。

卸問屋は多くの小規模楽器店からのこまごまとした注文に対応する手間がありますし、大量の在庫を抱えるなどのリスクがありますが、その辺りのリスクと利益の判断も卸問屋の腕の見せ所ですね。

言うなれば、卸問屋は大手メーカーが請け負うべき手間と楽器店が負うべきリスクを肩代わりし、その代償として利益を得ているような形です。

3.工房系メーカーや小規模楽器メーカーの代理店として

販路拡大の例ですが、他にも色々な例があります。

例えば、楽器店との直接取り引きを嫌がるメーカー

この傾向はハンドメイド系の楽器工房でよく見られ、社長さんも職人さんだったりで営業マンはいない、みたいなパターンが多いですね。

商売よりも良い楽器の製作に専念したいのに、色々な楽器店からの注文に愛想よく対応するのが面倒だ!というのが本音でしょうか。

愛想の悪いメーカーはやはり業界内でもあまりいい顔はされません。

が、それでも潰れないということは、それだけいい楽器を造っているということ。

人気もあったりするんですよね。

しかし正直愛想が悪いというか、事実として、「 お互いにとってはビジネスだし、立場的には一応こっちが客なのにその対応はどうなの・・・ 」と楽器店側が感じるような対応をされることも結構あります。

こういう時に楽器店とそのメーカーの間に卸問屋が入って、メーカーの卸業務代理店のように立ち回ることがあります。

楽器メーカーからすれば相手にするのは卸問屋一社で済むのでより楽器作りに専念できますし、楽器店側も注文の度にいちいち嫌そうな対応をされずに済んで、みんな幸せになれるというわけです。

他にも、楽器業界に参入したばかりの小規模なメーカーなどまだ楽器店へ商品を卸すルートを持っていないメーカーが、卸問屋の販売ルートを利用する例もあります。

立ち上げたばかりの小さなメーカーが、直接全国津々浦々の楽器店に商品を売り込むのはかなり大変な作業。

しかし、卸問屋に商品を売り込んで売れると判断されれば、卸問屋が自社に付き合いのある楽器店に売り込んでくれます。

どちらの場合も、メーカー側としては卸問屋だけに細かいことは任せておけるメリットがあり、楽器店としても仕入れをある程度まとめられ、しかも新商品の情報ももらえるというというメリットがあります。

まとめ

・卸問屋は、様々な楽器店と様々な楽器メーカーとの間に立ち、双方の諸々の手間やリスクなどの問題を省く役割を持つ。

・参入したての小規模な楽器メーカーや営業の苦手なメーカーでも、卸問屋の営業ルートを使うことにより販路を確保できる。

・これらの代償として、卸問屋は中間マージンを頂戴し利益としている。

レアケースではありますが、メーカーと販売店がケンカになって直接取り引きがしづらくなった時でも、楽器店は卸問屋を介してそのメーカーの商品を仕入れる、なんてこともあり得ます。

今回は卸問屋について説明するため卸問屋を使うばかりがメリットがあるようにも書きましたが、楽器業界内にも楽器店とメーカーが直接取り引きをしていることも多々ありますし、何もメーカーと楽器店の取り引きに全て卸問屋が間に入っているわけではありません。

メリットばかりでなく、デメリットもなくはありませんから。

(卸問屋に在庫がない商品の場合、取り寄せにかかる納期がメーカー直よりもかかるなど)

また、これは前回もチラリと触れたの素が、卸問屋と言っても卸業務専門というところばかりではありません。

メーカーとして自社ブランド商品を運営しつつ、他社の商品の卸業務も行うという会社も多くあります。

本サイトは第一に楽器店のスタッフにないたい方向けではありますが、この辺りは特に楽器メーカーや卸問屋に就職したい、と言う方も頭に入れて置いた方がいいでしょう。

さて、これで楽器店とメーカー、卸問屋の関係性はおわかり頂けたでしょう。

しかし、これらはあくまでも国内のみで完結している場合のお話。

輸入楽器の場合、メーカーは海外にありますから、当然商品を輸入する必要があります。

その時に出てくるのが海外メーカーの日本現地法人や、輸入代理店。

この二つの存在も、楽器業界においてなくてはならない存在です。

下記関連記事にもリンクがありますので、ぜひお読みになっておいてください。