セミアコースティックギターの定義
セミアコ―スティックギターの分類と定義
さて、基本的なギターの分類法については前回まででお話した通りです。
イマイチわからん、と言う方は関連記事から復習推奨。
時間があまりない方は、その4のまとめだけでもある程度理解できるかと思います。
セミアコースティックギターとは
さて、そもそもセミアコースティックギターとは何か、というお話ですね。
やはり有名なところだとGibson ES-335でしょう。
エレキギターをあまり知らないという方でも目にしたことがあるかと思います。
このES-335に代表されるエレキギター郡が、セミアコースティック、通称セミアコと呼ばれています。
セミアコの分類
セミアコはボディー内に空洞とホールを持ち、分類としてはソリッドギターではなくアコースティックギターの部類に入ります。
が、セミアコは基本的にボディーに厚みがなく、また後述するセンターブロックのために空洞の面積が小さく、フォークギターやフルアコ比べれば生音は全然小さいです。
もともとフルアコースティックギター風の甘い音とソリッドボディーのエレキギターの取り回しの良さを両立させたい、というところから開発が始まったもの。
そのためセミアコといえば原則エレキギターなので、生音を大きくする工夫もあまりなされていません。
むしろアンプで音を出した際のことをメインに考えて設計がなされており、アコギをエレキ化した際のデメリットである 『 ハウリングの起こりやすさ 』 を抑えるためボディーの厚みを薄くするなど、生音の鳴りは重要視されていないのです。
セミアコの定義
セミアコースティックギターと言うギターの定義は、やはりそのボディーの構造によって決められます。
セミアコがセミアコたるには、下記の条件を満たしている必要があります。
条件1 薄胴であること
前述の通り、セミアコはフルアコ風の音とソリッドボディーのような取り回しの両立を目指したもので、セミアコとフルアコとの最大の違いはそのボディーの厚みにあります。
実際のサイズについては各社モデルによってマチマチですが、ボディーが薄い構造=薄胴である場合はセミアコということになります。
条件2 センターブロック
ギターとしての特徴がよく似ているフルアコとセミアコのもう一つ大きな違いは、ボディー内のセンターブロックの有無。
このセンターブロックの有無も、セミアコであるかどうかを決める大事な要素の一つです。
フルアコはボディーが全面板になっていて、ブリッジやピックアップマイクもトップ板に載っておりその下は空洞になのですが、セミアコの場合その部分は空洞ではなくボディーの木材がそのままで、その上にザグリや穴を掘ったピックアップやブリッジを載せています。
この木材の部分を、センターブロックと呼びます。
センターブロックとは何か、文章だけで説明するのは管理人の作文能力ではちょっと難しいので、こちらの画像をご覧ください。
セミアコの場合はフルアコと違い、ボディー中央(弦の通り道)は空洞にはなっていなく、この木材の部分=センターブロックにパーツが載せられているのです。
空洞はこのセンターブロックの左右の脇など、周辺に配されます。
厳密に言うとちょっと違うのですが、棒状のソリッドギターの周りに空洞があるような様な構造とも言えます。
このセンターブロックのために 『 アコースティックギターに近いが、完全なアコースティックギターではない。 』 ということで、セミアコースティックギター、などと呼ばれているのです。
但し、センターブロックがセミアコと呼ばれる絶対必須条件ではなく、一部例外もあります。
例えばEpiphoneのCasinoなどはセンターブロックがなくフルアコに近い構造でありながら薄胴で、大きさも見た目もセミアコの代表格ES-335に近く、セミアコという風にみなされるのが一般的。
実は管理人個人的には「 センターブロックがなければセミアコとは言えないのでは? 」と思うところもありますが、現状では薄胴であるかどうかの方が条件付けとして強く、センターブロックの有無はセミアコである必須条件ではないという意見が一般的です。
※空洞は必ずセンターブロックの両脇になければいけないわけではありません。
どちらか片方だけでも空洞とホールがあれば、ホロウ扱いとなります。
条件3 ホールと空洞
アコースティックなんですから当たり前ですが、ホールと空洞があることも必須条件。
アコースティックギターの定義を解説する際に、ホールがあるかどうかはアコースティックギターの条件に挙げておりませんでしたが、セミアコの場合ホールは必須となります。
(※この後の補足を参照)
ちなみにホールの形状はどういったものでも構いません。
ホールの形状でよく見られるのはやはりES-335のようなfホールですが、そのES-335の中でもダイヤモンドホールと呼ばれるひし形のホールを持ったモデルも存在しています。
まずベースとなるボディー材のセンターブロックの部分は残して空洞部分の溝を掘り、上からホールの空いた板でフタをする、というのがセミアコの基本的な製造方法です。
ただ、製造方法には空洞部分の溝は完全に貫通させてトップ板・バック板でフタをする場合や、バックからフタをする場合など色々なパターンがあります。
補足 セミホロウ
セミアコといえばGibson ES-335や、ジョン・レノンが使ったことで有名なEpiphon Casinoなんかが有名です。
これらのイメージが強いためかセミアコといえばボディートップとバックが緩やかに膨らんでいるアーチトップギターというイメージがありますが、フラットトップ・フラットバック(トップとバックが膨らんでいない構造)のボディーでセンターブロックと空洞、ホールがあるギターもあります。
こういったものはセミアコに近い構造ではありますが、どちらかと言うとセミホロウという呼び名で呼ばれることが一般的。
代表例としては、リッケンバッカーの#330に代表される#300シリーズなどですね。
あくまで一般的な呼び方であって、セミアコとセミホロウ間に厳密な定義はありませんが、
・アーチトップ / アーチバック の場合はセミアコ
・フラットトップ / フラットバック の場合はセミホロウ
と呼ばれるのが一般的と認識しておくといいでしょう。
センターブロックとセミアコースティック構造のメリット
セミアコの場合、空洞の上にパーツが載っているエレアコやフルアコと違い、ブリッジ・ピックアップマイクなど主要なパーツは原則センターブロック上に載せられています。
そのため、エレアコやフルアコに比べ弦から直接空洞内へ送られる振動のエネルギーが減り、また、ボディー内部の空洞が真ん中で仕切られているため単純に空洞の面積が少なくなっています。
そのお陰でアンプで音を出した場合でもフルアコやエレアコに比べハウリングが起こりにくいのがセミアコの特徴です。
ブリッジやピックアップマイクなどのパーツが空洞の真上ではなく木材の塊の上に載っていることで、空洞内の振動が弦やピックアップへフィードバックされにくくなりハウリング防止の役に立っているようです。
フルアコっぽい丸く甘いニュアンスを持ちながら、ハウリングを起こしにくく、ソリッドギターに近い感覚で使用できるのが最大のメリットですね。
セミアコ―スティックギターの定義 まとめ
・セミアコの定義は、ボディーが薄胴で音を共鳴させるための空洞とホールがあり、一部例外を除きセンターブロックがあること。
なんだかんだと長くなってしまいましたが、これらの条件を満たしていればそれはセミアコースティックギターであると言えるでしょう。
しかし、セミアコっぽいけれども実はセミアコではないいうモデルもたくさんあります。
例えば、fホールがあるように見えるけども、塗装によるプリントだったり、何ミリか落とし込んであって溝になっているだけで空洞になっていないものなんかもあります。
見た目だけセミアコっぽくしただけの、ただのフェイクというパターンです。
または、ボディー内に空洞はあるが、ホールがないパターン。
ボディー内に空洞を造り、その空洞からの音を出すホールをつけず、完全に蓋をしてしまうことをチェンバー加工と呼び、チェンバー加工されたギターはセミアコースティックギターではなくセミソリッドギターという括りに入ります。
セミソリッドギターについて別途解説していますので、詳しくはこちらをご参照ください。
– セミソリッドギターとは –
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